「1Dモデリング」に関する連載。あらためて、モデリングの原点に立ち返り、物理量のフローをたどることにより、電気、熱、流れ、音振動といった現象を、同じような手順でモデリングする方法を解説する。連載第28回では、電気、熱、流れ、音振動のフローと、それぞれの物理式について取り上げる。
これまでの連載の中で、さまざまな現象や製品のモデリング方法について述べてきた。一方で、これからモデリングに取り組もうと考えている方々の中には、「どこから手を付けていいのかよく分からない……」と戸惑っている人もおられるのではないだろうか。
連載第4回「1Dモデリングの方法にもさまざまなアプローチがある」、連載第5回「『熱』と『流れ』を電気回路に置き換えてモデリングする」では、さまざまな現象を統一的に扱う考え方を紹介した。
そこで、今回はいま一度、モデリングの原点に立ち返り、物理量のフローをたどることにより、電気、熱、流れ、音振動といった現象を、同じような手順でモデリングする方法を解説する。当然、各現象の元となる物理は異なっているので、この部分を正しく理解しておくことが前提であるが、これさえできていれば、比較的簡略にモデリングが可能なことを説明する。
今回は、電気、熱、流れ、音振動のフローと、それぞれの物理式について説明。次回以降、現象ごとに具体的なモデリング例を紹介する。なお、一部の説明で連載第4回、連載第5回と重複する内容もあるが、今回の記事から読み始めた方にも分かりやすいようにするためだとご理解いただきたい。
既に述べたように、代表的な現象である電気、流れ、熱、機械(振動)を式で表記すると以下となる(式1〜4)。このように現象は異なっても見た目の類似性はあるので、モデリングに際してこれを利用することに越したことはない。
一方、実際の現象をモデリングする際には、上記の式が基本とはなるものの、そのまま適用できるわけではない。そこで、上記の式を出発点にして現象をフローで考えることにより、複雑な構造を有する現象であっても半自動的にモデリングできる方法を検討する。
以降、上記4つの現象について、その考え方を説明する。もともと異なる現象なので、現象によっては工夫が必要になることについても触れる。
既に述べたように、電気に関しては次式が成り立つ。
Lはインダクタンス、Rは電気抵抗、Cはキャパシタンス、iは電流、Vは電圧である。ここで、電流をフローと考え、今ある電気回路の一部を取り出し、図1のように表現する。キャパシタンスがアースされているように見えるのは実体と合わない気もするがご容赦願いたい。
図1を式で表現すると、電流の連続の条件(電流則)から、
となり、各要素の電流(フロー)と電圧(ポテンシャル)の関係(電圧則)から、
が成り立つ。ここで、iik,ijl,ijmが既知であるとすると、未知数はVi,Vj,iij,iic,ijcの5つであり、式は上記の5つの式なので解くことができる。すなわち、どのような電気回路であっても、電流に着目し、そのフローに従って図1の形式で表現して、定式化することにより、半自動的に式を導出でき、解析評価することが可能となる。
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