自動運転技術は低速域でも着実に進化、ホンダが道の駅で実証モビリティサービス(2/2 ページ)

» 2024年02月02日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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 実証実験に期限は設けず、2030年のCI搭載モビリティの実現に向けて長く取り組む。2024年春にはCiKoMaにコミュニケーション機能を追加するとともに、2024年中に遠隔監視システムを確立する。当初は運転席と助手席に監視員が乗車するが、段階的に監視員なしの自動走行に移行する計画だ。関係省庁との交渉の上、2025年中には無人自動走行の実現を目指す。

 走行エリアは、水海道あすなろの里やアグリサイエンスバレー常総の敷地内の一部でスタートしたが、今後走行できる範囲を徐々に拡大する。アグリサイエンスバレー常総に関しては、敷地外の公道や近隣の駅周辺にも走行エリアを広げる。

一般車両と交差するルートでも安全に走行する[クリックで拡大] 出所:ホンダ

 2030年に実現する提供価値を100とすると、現状の進捗はまだ30%程度だという。CIの仕組みを分かっているエンジニアが参加した社内での作り込みだけでなく、CIを知らない一般のユーザーを相手にすることで、CIに対する人々の接し方を分析し、CIに必要な対応力を磨いていく。将来的には、ウォーカブルシティーの整備が進む欧州や、コンパクトモビリティーが普及しているアジアにもCIを搭載したマイクロモビリティを展開していきたい考えだ。

CiKoMaとコミュニケーション

 CiKoMaは当初、自動走行の体験のみ行うが、2024年春からはCiKoMaとコミュニケーションを取るための専用端末を貸し出して実証を行う。CiKoMaは、専用の端末に対して「○○にお願い」などと話しかけると、迎えに行く場所を理解する。迎えに行った場所で手を振っている人をユーザーとして認識し、ユーザーの元で停車する。目的地や迎えに来てほしい場所はコマンドとして決まった表現である必要はない。

 降りるときは「ここで止めて」と言えば最初の指示した目的地以外でも降車できる。一般車両が出入りする駐車場の入り口など不適切な場所で止めるよう指示された場合は、危ないので別の場所で降車場所を再度指示するよう回答する。途中下車して、徒歩で移動した後も呼び出せば引き続き目的地まで移動できる。

 CiKoMaの地図レス協調運転技術は、カメラベースで周囲の人やモノを認識して場面を理解した上で、周囲にいる歩行者などの行動の意図理解と動きの予測を行いながら自車の行動計画を決める。インタラクティブな交渉や譲り合いもできる。乗員に対しても、カメラやマイクによって行動や意図の理解を重ねながら交渉や確認、提案を行う。

 誰かに運転してもらって道案内するとき、人々はあいまいな表現を多用する。本田技術研究所がVRを用いて実在する街並みで道案内の実験を実施したところ、「角にあるコンビニの2つ隣の建物で止めて」「あそこのお店の隣で降りたい」といったさまざまな言い方で目的地を伝えることが分かったという。目的地の店名や看板に具体的に言及しない場合も珍しくない。

 生成AI(人工知能)がインターネット上の情報を基に著しく進化しているが、こうした移動時のコミュニケーションに関する情報はインターネット上にはない。そのためホンダのCIは生成AIをそのまま取り入れることは難しく、実証実験を重ねながらオリジナルで作り込んでいく必要がある。実証実験では子どもや高齢者にも参加してもらい、どのようにCIとコミュニケーションを取るか、学習していくことを狙っている。なお、生成AIで使用されているTransformerなどのモデルをCIの開発に応用する可能性はあるという。

レトロフィット型のスマートシティーに

 ホンダはレトロフィット型のスマートシティーへの貢献に力を入れる。再開発などによって自動運転バス/タクシーを走らせるエリアを決めるようなスマートシティーでは、活性化できる範囲が限られてしまう。レトロフィット型は既存の地域の強みを生かしながら活性化することを目指している。

「移動手段を魚の骨に見立てて、鉄道で1本の横に長い骨が街の中を走っているとする。利便性を求めてその路線沿いに人が密集してしまうと、住み心地がよくなくなってくることも考えられる。その横の骨に対して、縦の骨をいかに伸ばしていくか。これまではタクシーやバスがその役割を担っていたが、人手不足などで維持が難しくなっている。マイクロモビリティが縦の骨を伸ばしていくことに貢献できれば、街の形を大きく変えずにスマートにしていくレトロフィットのスマートシティーになるのではないかと考えている」(本田技術研究所の安井氏)

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