本田技術研究所はアグリサイエンスバレー常総において、一般の訪問者を対象にした自動走行技術の実証実験を開始する。
本田技術研究所は2024年2月1日、アグリサイエンスバレー常総(茨城県常総市)において、一般の訪問者を対象にした自動走行技術の実証実験を開始すると発表した。
ホンダはこれまで常総市内の水海道あすなろの里やアグリサイエンスバレー常総で、協調人工知能「CI(Cooperative Intelligence)」搭載のマイクロモビリティの実証実験を行ってきた。アグリサイエンスバレー常総は道の駅や大型書店、飲食店、観光農園などが敷地内に集まった施設だ。さまざまな人が訪れる環境を生かして、技術のさらなる作り込みや、社会受容性の醸成につなげる。
アグリサイエンスバレー常総では、複数のマイクロモビリティを走らせる。1つはゴルフカートをベースにしたグリーンスローモビリティ「CiKoMa」で、歩行者も通行する歩道「歩車融合エリア」を時速6km以下の低速で自動走行する(歩行者が全くいなければ時速15km程度までスピードを出せる)。周辺環境を認識するセンサーはカメラのみで、乗客が手を振った場所に迎えに行ったり、乗客が降りたい場所の看板を認識したりする。
また、CiKoMaは周囲の歩行者の行動を予測しながら軌道を変更して接触を回避し、歩行者と混在する空間でも安全に自動走行する。駐車場を出入りする一般車両と交差する際には、一般車両に道を譲ることもできる。2024年夏には、CiKoMaの技術を搭載した2人乗りの四輪電動モビリティ「CI-MEV」を追加し、技術実証の場を常総市内に広げる。CI-MEVはCiKoMaと一般的な乗用車の中間の速度域で、グリーンスローモビリティが走る限定されたエリアよりも離れた場所への移動を想定している。
アグリサイエンスバレー常総は、全国的に見ても人出の多い道の駅が施設の1つに含まれている。そのため、CiKoMaが走行する歩車融合エリアと交差する駐車場の出入り口は一般車両の出入りが多い。トラックも行き来する。CiKoMaが走行するエリアを拡大していくと、アグリサイエンスバレー常総の敷地内は、歩行者だけでなく犬を連れている人やカートを押している人なども増える。
「ここをちゃんと走れるようになれば、かなりいろいろなところに一気に広げていける。一般的な乗用車の運転支援技術や自動運転技術の進化は別途進めているので、低速の自動運転技術を鍛え上げれば挟み撃ちで高度化できる」(本田技術研究所 先進技術研究所 知能化領域 エグゼクティブチーフエンジニアの安井裕司氏)
アグリサイエンスバレー常総を走らせるもう1つのモビリティは、利用者とともに移動するロボット「WaPOCHI」だ。カメラによる画像認識で利用者の特徴や手足の動きが分かる骨格情報を把握し、前後左右のカメラや前後のLiDARで利用者を捕捉し続ける。これにより、利用者の歩く速度に合わせて追従するだけでなく、利用者が行こうとしている方向などを理解して利用者を先導する形で移動することもできる。WaPOCHIの最高速度は時速5km。
これらのマイクロモビリティに搭載する協調人工知能CIは、高精度地図を使わずに周辺環境を認識しながら走行する「地図レス協調運転技術」と、対話やジェスチャー理解によるコミュニケーションを可能にする「意図理解・コミュニケーション技術」をコア技術としている。CIはマイクロモビリティなどの低速域だけでなく、従来の乗用車の速度域に対応するものも開発中だという。
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