倉庫業などを営む富士倉庫では、サービスの一環で行っているアーモンドの選別用として、AI外観検査装置の導入に踏み切った。導入に至った背景やその手応え、今後の展望などを富士倉庫および装置を開発したロビットに聞いた。
近年のAI(人工知能)やセンサーの発達は、これまで人が行っていた難作業の自動化を可能にしている。倉庫業などを営む富士倉庫では、サービスの一環として行うアーモンドの選別用に、AI外観検査装置の導入に踏み切った。導入に至った背景やその手応え、今後の展望などを富士倉庫および装置を開発したロビットに話を聞いた。
1946年創業の富士倉庫では横浜港に4棟の大型保税倉庫を保有し、世界中から届く食品原料や飼料、有機加工食品など有機商品の保管に加えて、通関、流通加工、フォワーディングなどの総合物流事業を展開している。一方、ロビットは、AIやロボティクスなどソフトウェアとハードウェアの融合による社会や企業の課題解決に取り組む、2014年設立の企業だ。
その中で提で提供しているサービスが選別作業だ。原料として輸入された落花生、アーモンド、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、クルミなどナッツ類には、小石や枝茎の他、形状不良などの不良豆が混じっていることがある。それらを食品加工メーカーなどの顧客のニーズに応じて取り除く。選別場には、作業服に付着したちりやほこりを除去するエアシャワーやLEDライトを備え、壁や床は防塵加工するなど高い衛生基準に対応している。
今回、富士倉庫ではアーモンドの選別作業にロビットが開発したAI外観検査装置「TESRAY Gシリーズ」を導入し、2023年11月から稼働を始めた。TESRAY Gシリーズでは、検査対象が空中を落下するわずかな間にカメラで撮影し、AIによる検査を実施、着地前に異常品をエアーで排出して選別することができる。
選別作業の中心となっているのは、ハンドピッカーと呼ばれる作業員たちだ。ただ近年は、人手不足で募集をしてもなかなか集まらなくなっているという。例えば、内陸なら工場を中心とした円のエリア内で人材募集をかけられる。しかし、海沿いの港にある倉庫などの場合、人が住んでいない海側を除いたおおむね半円のエリアに限られてしまうなど、もともと人材募集が難しい環境にある。富士倉庫 東京支店 営業部営業一課 課長の黒江亮介氏は「選別作業の習熟には時間もかかる。自動化は避けて通れなくなっていた」と話す。
色彩選別機の導入も選択肢にあった中で、AI外観検査装置を導入したのはカメラの性能や解像度がポイントとなった。TESRAY Gシリーズでは従来の色彩選別機では検出できなかった、形状不良、虫ズル(虫食い)、殻つき、樹脂異物といったアーモンドに発生する不良品の選別が可能となっている。
従来行っていた目視による手選別では、作業員がベルトコンベヤーに流れてくるアーモンドをチェックするが、ただ流れてくるものを見るだけではアーモンドの片面しか見えない。そのため、途中でベルトコンベヤーに段差を設けてあり、アーモンドを落下させることで裏返す仕組みになっている。ただ、それも100%ひっくり返るわけではない。その点、TESRAY Gシリーズはカメラで両面を検査することができる。
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