なぜ製造DXは成果が出ないのか いまだ根強い「3つの誤解」結果を出す製造DX〜人を育ててモノの流れを改革する〜(1)(1/3 ページ)

モノづくりDXの重要性が叫ばれて久しいが、満足いく結果を出せた企業は多くない。本連載ではモノの流れに着目し、「現場力を高めるDX」実現に必要なプロセスを解説していく。第1回はDXをめぐる「3つの誤解」について説明する。

» 2024年01月12日 10時00分 公開

 DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が叫ばれて久しい。DXとは、平たく言えば「D(デジタル)+X(変革)」だ。政府は国の競争力を高めるカギとしてDXを後押ししており、民間でもDX関連のセミナーを見ない日はない。DXの重要性への認識は十分広まってきているように見受けられる。

 しかし、実態はどうか。情報処理推進機構が毎年発行している「DX白書」の2023年版には、残念ながら「進み始めたデジタル、進まないトランスフォーメーション」という表題が掲げられている。DXに取り組む企業は2021年時点の56%から2022年には69%と増えた(DX白書2023より)。一方、DXで成功したと胸を張る企業は58%にとどまり、米国の89%と比べて大きな差がある(同)。

⇒連載「結果を出す製造DX〜人を育ててモノの流れを改革する〜」のバックナンバーはこちら

なぜDXが進まないのか?

 私はコンピュータサイエンスの修士号を持ち、Amazon.comでも最先端のデジタルサービスを推進してきた。今はIoT(モノのインターネット)重量計「スマートマット」を使い、リアルタイムで在庫数を把握することで現場カイゼンができる、生産管理DX「スマートマットクラウド」を事業展開している。

リアルタイムで在庫が確認できるようにした「スマートマットクラウド」 リアルタイムで在庫が確認できるようにした「スマートマットクラウド」[クリックして拡大] 出所:スマートショッピング

 事業を通じて感じるのは、DXに関わる誰が悪いというわけではない、という事実だ。皆がDX実現を望んで全力で挑戦している。にもかかわらず、結果につながらず苦しんでいる。その背後にあるのは、以下3つの誤解だ。

誤解(1):「DX=D(デジタル)」
誤解(2):「X(変革)」は一気に行わないといけない
誤解(3):DXのROI(投資対効果)計測は人日計算だけで行う

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