今回、建設された新棟は3階建てで、2016年からプリントヘッドの生産を行っている既存の7号棟に併設している。
1階ではプリントヘッドに使う部品の成形やプレス加工などを行う。同様に成形部品も作っている7号棟では、金型交換に門型クレーンを使っていたが、新棟ではホイストクレーンを導入し、効率的に金型の交換を行えるようになっている。また、各成形機に門型クレーンが入るスペースが要らなくなったことで、より多くの成形機を設置できるようになり、スペース生産性も向上している。
2階と3階はクリーンルームとなっており、プリントヘッドの組み立てを行う。新棟ではシミュレーションを駆使して最適なレイアウト構想を追求しており、7号棟では部品の投入から完成まで複数の工程を1つのラインとして構成していたが、これを工程ごとに設備をまとめてフロア全体を1つのラインとした構成に替えることで、作業者の多台持ちに取り組む。
既に7号棟でも1階でも出来上がった部品などは自動で専用のトレーに入れられ、組み立てもロボットなどが行うため、成形材料の投入以降は作業者が手で直接部品に触れることはないほど自動化は進んでいる。それでも、自社製ロボットを用いた高効率ラインによって既存の7号棟よりさらに自動化を進め、生産性30%向上を目指す。
同じ建屋構造の7号棟では2階と3階に更衣室があり、それぞれの階でクリーンルームウェアに着替えてからクリーンルームに入っていたが、新棟では2階に更衣室を集約し、3階で働く作業者も2階で着替えてから3階のクリーンルームに上がる構造とした。これによって、用具の一元管理などを進める。
それでも平田氏は「工場ではモノを作ることでしか表現できない。自動化、効率化の追求は当然だが、最後にモノを形にできるのは人間の技能だ。どんなにロボットやAI(人工知能)が発展しても、取って代わることはない。だからこそ技能はわれわれの生命線であり、自己研鑽(けんさん)を続けていく必要がある」と語る。
設備の納入は段階的に行っていく予定となっており、新棟の完成により秋田エプソンにおけるプリントヘッドの生産能力は将来的に現在の3倍程度まで拡大する。吉田氏は「世界経済の景気減退は業績にも影響を与えているが、これらの投資はその先の2025年以降の事業成長に向けた準備という側面もある」と述べる。
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