勉強した方がトクなのは分かるけど、なんだか難しそうでつい敬遠してしまう「経済」の話。モノづくりに関わる人が知っておきたい経済の仕組みについて、小川さん、古川さんと一緒にやさしく、詳しく学んでいきましょう!
小川さん:学生時代アメフトで鍛えた、体育会系機械エンジニア&金属加工職人。経済統計に興味があり、趣味で統計データを共有する情報発信を続けている。ラーメン好き(現役時代よりも体重が増えていることは家族に内緒)。
経済構造に詳しい古川さん: 元エリート銀行マンで、現在は起業しスタートアップの事業支援など、製造業を中心としたエコシステムの構築を進めている。大学の非常勤講師や、地域経済活性化のための委員なども務める。実は照れ屋。
(※)編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物、団体などとは一切関係ありません。
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古川さん、前回は消費と貯蓄について解説していただきました。
基本的には再分配後の可処分所得から、最終消費を差し引いた残りが貯蓄です。そしてその貯蓄を原資として、今回説明する資本取引が行われますが、もし足りなければ資金調達をすることになります。
(6)の資本勘定という部分ですね。いろいろな項目が出てきますが、具体的にはどのような活動が表現されているのでしょうか?
資本勘定は非金融面の資産、つまり土地や機械、建物などの固定資産の取得/処分による変化を記録するものです。それらの取得/処分が元手の範囲内であれば余った分が純貸出として手元に残ります。足りなければその分は純借入として誰かから借りてくることになるわけです。その様子が図2の純貸出/純借入として表現されています。
貯蓄(純)の側に加わる資本移転というのは何でしょうか?
受取側の投資や長期的な支出の元となるような、反対給付を伴わない移転のことです。具体的には、投資に対する補助金や助成金のほか、負債の帳消し分、補償金の支払などがあります。相続税や贈与税といった資本税も含まれます。
なるほど。貯蓄に補助金などの資本移転分だけがプラスされるイメージですね。
企業や家計などの受取側としてはそうですね。そして、重要なのが総固定資本形成です。これが、いわゆる投資にあたります。
GDPに加えられる項目ですね!
とても重要な項目なので、少し詳しく説明しましょう。まず、資本という言葉が何を指すのかを確認していきましょう。
資本主義の「資本」が何か、という話ですね。お願いします!
そもそも資本とは、生産活動を行うために必要な土地、労働、資本の3つの要素の1つで、生産により生み出された生産手段を意味します。具体的には、工場、建物、機械設備などの固定資産や、原材料などの在庫が当たります。
モノやサービスを生産するための、実物の生産手段ということですね。
はい。SNAでは非金融資産のうち、生産過程によって生み出されたものを生産資産としています。そして、生産資産のうち1年以上繰り返し使用できるものを固定資産と呼んでいて、固定資産への支出を総固定資本形成と呼びます。
固定資産や在庫などの生産資産、土地などの非生産資産は次の表のように分類されます。
総固定資本形成は固定資産の取得金額、固定資本減耗はその固定資産の目減り分、在庫変動は在庫の変化により変動した分の金額ですね。残りの土地の購入(純)というのはどういった意味でしょうか?
土地がどれだけ増えたかを計上するということです。(純)と表記されているのは、新たに取得された分から、売却された分を差し引きした正味の価値であることを示します。
日本全体でいえばもちろん差引ゼロとなりますが、経済主体別に見ると、その主体による購入と売却のどちらが多いのかという傾向を把握できます。
なるほど。まとめると貯蓄を元手にして、生産活動に必要な非金融資産を増やすのに費やした金額の残りが純貸出(+)/純借入(−)になるのですね。
その通りです。この金額がプラスであれば純貸出となり、貯蓄超過の黒字ということになります。超過した分だけ、資産が増加することになります。マイナスだと純借入となり、投資超過の赤字です。そして、足りない分だけ資金調達が行われたことを示します。
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