では、日本の各部門について資本勘定の統計データを眺めてみましょう。まずは、私たち家計からです。
図6は日本の家計の資本勘定をグラフ化したものです。受取側をプラス、支払側をマイナスとして表現しています。土地の購入(純)、固定資本形成(純)は、購入/支出が多ければマイナス側に、売却/減耗が多ければプラス側に表記されます。
家計の純貸出はプラス傾向が続いていますね。ただ、1990年代後半までは安定してプラスですが、それ以降は急に減少してからアップダウンしている不安定な印象です。
はい、とても重要なポイントですね。日本経済が1990年代後半で大きく転換したさまを表すものとも言えます。それまでは、家計は貯蓄(純)という元手が多く、最終的な純借入/純貸出もプラスで大きく貯蓄超過の状態でした。
現在も日本の家計は金融資産、とりわけ現金/預金を多く持っていますが、その多くはこの当時に積み上げられたものと推測されます。
1990年代初頭までは、土地の購入(純)がプラス側になっています。これはどう解釈すれば良いでしょうか?
まさに不動産バブルの状況を示していますね。土地の購入(純)がこのグラフでプラス側に計上されているということは、土地の購入よりも売却した金額がそれだけ上回っているからです。
当時は不動産バブルで、土地の値段がどんどん上がっていて、財テクとして家計でも土地の売買をしていたなどということもよく聞きます。
その通りです。SNAでは土地の価格は時価評価されますが、土地の売買に伴う家計の資産の増加分が土地の購入(純)となりますね。単に土地を持っていただけでも、地価の値上がり分価値が増えるはずです。これは、ストック側の貸借対照表の土地の時価額で表現されることになります。
当時は元手となる貯蓄(純)がたくさんあって、さらに土地取引の収益が加算されていたため、総固定資本形成が多くても、差引きの純貸出が大きく超過していたと読み取れます。家計の金融資産が高齢層に偏在しているということとも関係がありそうです。
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