――現在は、3Dフードプリンタを活用してどのような事業をしていますか?
若杉さん 1つ目が「形によって食感はデザインできる」という自分の仮説に基づいた事業です。例えば、形によってチョコレートの食感を変える研究など、同じ素材でも形によって食べた時の印象が変わるのかなどを研究しています。3Dフードプリンタを使って様々な形状のチョコレートを作り、一般の方々向けに販売するポップアップショップを開催しました。過去にも同様のコンセプトでフードイベントを開催しています。
そして2つ目は「パーソナライゼーション(顧客一人一人に合わせて商品やサービスを提供すること)」に着目した事業です。例えば味の好みや栄養素など、お客さまに合わせた素材を使った栄養食の研究開発などを行っています。
――食事の見た目の話が出ましたが、3Dフードプリンタで出力された食べ物の見た目に関する工夫などはありますか?
若杉さん まだ研究途中ではありますが、食べ物の形や見た目によって受ける印象が変わるかという研究もしています。例えば、安全そうに見える食べ物と反対に危険そうに見える食べ物にはどんな見た目の違いがあるのか、おいしそうな見た目の食べ物を3Dフードプリンタで出力するにはどうすればいいのかなどを追求しています。
あとは、おいしそうな見た目とはまた違う軸で、例えば「不思議だ」と感じる食体験ができる形や見た目があるのではないか、とも思っています。今まで見たことがないようなものも作ってみたいです。
――「不思議だ」と感じる食体験ですか。例えばどのようなことをイメージしていますか?
若杉さん 全て同じ素材で作っているのに形を変えるだけで、ハンバーガーのような見た目と食感にもなるし、たこ焼きのようなとろっとした食感にもなる、といったイメージです。形の違いだけで食感の違いを生み出すというところをもっと深堀りしていきたいです。
――起業したことによって考え方など変化した部分はありますか?
若杉さん 大学院を卒業した頃は、3Dフードプリンタにどんなポテンシャルがあるのかまだあまり分かっていませんでした。起業する時に、3Dフードプリンタの価値やどんな場面で活用できるのかを深く考え始めたことで、視座が高まったと感じています。手探りのところもありますが、自社内での研究や他社様との協業によって、3Dフードプリンタの価値をもっと追求していきたいと思います。
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