製造業×品質、転換期を迎えるモノづくりの在り方 特集

沢井製薬が安定性試験で不正行為、2015年から別カプセルへの詰め替えが常態化品質不正問題

ジェネリック医薬品の沢井製薬は、九州工場で製造するテプレノンカプセル 50mg「サワイ」の安定性モニタリングの溶出試験において、不適切な試験が行われていたことを発表した。

» 2023年10月24日 06時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 ジェネリック医薬品の沢井製薬は2023年10月23日、九州工場(福岡県飯塚市)で製造するテプレノンカプセル 50mg「サワイ」の安定性モニタリングの溶出試験において、不適切な試験が行われていたことが判明し、特別調査委員会より調査結果報告書を受領したと発表した。

 沢井製薬 九州工場では、製造するテプレノンカプセル 50mg「サワイ」の安定性モニタリング(製造販売中の医薬品の品質が承認後も担保されていることを継続的に確認、保証する試験)において、2015年以降、カプセルから内容物である顆粒を取り出し、別の新しいカプセルに詰め替える作業を行った上で溶出試験を行う不正行為が継続的に行われていた。

 最初に不正行為が行われたのは、2013年に実施された安定性モニタリングにおける溶出試験で規格外(OOS)の結果が発生した際だとする。当時の九州工場の上層部において、GMP(医薬品の製造管理および品質管理の基準)に基づく手続きを怠ったことをきっかけに悪い方向で定着した。

 当初は、規格外(OOS)の結果を受けて、溶出性低下の原因を調査するためにカプセルを詰め替えて試験を実施する指示を行ったが、その後GMPに基づく正式な社内報告や原因究明、是正措置などを行わなかった。その後、カプセルを詰め替えて実施した試験による規格内になったため、溶出試験に関するGMP上の手続きを終了してしまった。

 このような処理を受けて、該当製品による安定性モニタリングにおける溶出試験では、カプセルを詰め替えて実施した試験による規格内の結果をもって処理することが、上層部からの指示であると捉えた試験担当者らにより、不適切試験が継続的に行われる状況が生まれたという。

 調査結果報告書によると、管理職以上の上層部が、不適切試験の実施を指示したり、黙認したりした事実は認められなかったとするが、監督体制の不備により不適切試験を検出できずに、長年にわたり継続する状況を生み出したとしている。

 また、これらの不正行為が継続した原因について調査結果報告書では、人的要因としては「安定性モニタリングを軽視する風潮の蔓延(まんえん)」「上司の指示に疑問を持たずに従う傾向」「試験関与者のGMPに対する理解の欠如」の3つを挙げている。また、物的要因としては「品質管理、品質保証の観点からの実効的な監督体制の不備」「試験記録管理の不十分さ」「試験を担当する品質管理部の業務過多および人員不足」を指摘している。

 不正行為の対象となったテプレノンカプセル 50mg「サワイ」については2023年7月に使用期限内の全ロットを自主回収した。また、現在までに今回の不適切試験に起因すると考えられる健康被害の報告はないとしている。

 沢井製薬では今後、再発防止に向けて「社長直轄の企業風土改革プロジェクト立ち上げ」や「既存製品の製造面、品質面での再評価とその対策実施」「生産本部における再発防止策の実施」の3点を進めるとしている。生産本部においては、全従業員に対するGMP教育の再実施と継続実施、管理職や監督職の責任の明確化、工場の品質管理部門や品質保証部門への社内外からの人材確保、データインテグリティ確保のためのシステム導入などを進めるとしている。

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