日立Astemoは2021年12月に公表したブレーキ部品やサスペンション部品の検査不正に関する調査結果を発表した。
日立Astemo(アステモ)は2023年5月19日、2021年12月に公表したブレーキ部品やサスペンション部品の検査不正に関する調査結果を発表した。原因分析や再発防止策などについてもまとめた。
この調査の結果、検査不正の対象となる製品数は前回調査から13種類増えて22種類となった。取引先数は53社増えて69社で、このうち3分の2から4分の3が日系企業だという。自動車や二輪車だけでなく、鉄道車両用や農業用機械なども含まれることが分かった。検査不正のあった拠点は13カ所増えて15カ所(国内11カ所と海外4カ所)に上った。件数(本数)は5万7259件(1010万本)から5万8899件(2億11万本)に増加した。検査が不正に行われていた期間は、当初2000年ごろから2021年10月としていたが、1983年1月〜2023年4月に修正した。
現時点までに検査に不正のあった製品は取引先に開示しており、社内検査の結果、安全性や性能に問題はないとしている。生産を終了した製品については、再度作って安全性を確認した。また、安全上のトラブルや道路運送車両法への法令違反も起きていないという。
コンプライアンス文化や管理監督体制が「相当期間にわたって不十分だった」(日立アステモ)。組織全体で改善策を策定し、関連する教育やプロセスの見直し、人材や設備への投資などを継続的に実施/改善して再発防止を図る。
時期 | 取り組み |
---|---|
2021年12月〜2022年6月 | 独立的な立場の社外弁護士3人からなる特別調査委員会による調査を実施 |
2022年7月〜同年9月 | 社内調査を実施するとともに、追加調査についても調整 |
2022年9月〜同年12月 | 社外弁護士を起用した上での追加のグローバルサーベイを実施 |
2022年10月〜2023年2月 | 特別調査委員会が2022年1月〜同年6月の調査結果を再精査するために追加のスクリーニング調査 |
2022年10月〜2023年5月 | グローバルサーベイや追加スクリーニングに伴う社内調査や、取引先などとの調整 |
2021年12月以降に確認された不適切行為としては、定期的な抜き取り試験の未実施、不具合の原因と対象件数の虚偽報告、顧客承認なしの変更、顧客の要求仕様とは異なる方法での検査や試験報告書の提出、試験や測定、判定の未実施などがあった。
原因として、利益や納期を優先して品質保証を軽視する経営陣の姿勢に起因する従業員のコンプライアンス意識の不足、人的/物的リソースの不足を挙げた。また、現場では対応できない内容の試験や製品の仕様であるにもかかわらず、取引先の要求に従って合意することや、トップが先導して順守可能な範囲の合意形成を図れるように覚悟を持って交渉する努力の欠如も原因だとしている。
また、品質保証問題に関する自浄作用の欠如、上下間や部署間のコミュニケーションの問題、同じ部署や工場での人材の固定化による交流不足、業務のチェック体制の形骸化、業務手順のルール化不足、不正が介在しにくいシステムの不足、本社の品質統括本部の関与不足、内部監査の不十分さ、内部通報制度の機能不全などにも言及した。
「私たちとお客さまの間で何が実現可能かということに関して、意見が一致していませんでした。それをクリアかつオープンに何が可能で何が可能でないか、はっきりさせたいと考えています。品質やコンプライアンスではなくコストや納期にフォーカスを当ててしまった問題も改善を図っていきます」(日立アステモ CEOのブリス・コッホ氏)
再発防止策は、マネジメント、工場、品質保証の3つの柱で推進する。マネジメントに関しては、品質やコンプライアンスに関する経営陣の意識の再確認とトップメッセージの継続的な発信、品質保証に関わる人的/物的リソースの増強と品質保証部門の地位向上、国内外の全ての役員と従業員に対する品質コンプライアンス教育の追加実施、人事考課基準の再検討、顧客との適切な協議/交渉の実現のための改革を実施する。
工場では、情報共有やコミュニケーションの活性化、部署間の縦割りを解消するために業務を共同で遂行する業務体制の構築、工場間や部署間の人材交流の活性化などを行う。また、業務のチェック体制の強化、業務手順のルール化と周知、デジタル化や自動化システムの構築で2025年度までに約3600台のテスト機材などに投資などを予定している。
品質保証に関しては、本社の品質統括本部の関与強化および事業軸を通さない独立した品質保証レポートラインの構築、内部監査体制の強化、内部通報制度の改善などに取り組む。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.