製造業×品質、転換期を迎えるモノづくりの在り方 特集

日立Astemoでブレーキとサスペンションの検査に不正、2000年ごろから品質不正問題(1/2 ページ)

日立Astemo(アステモ)は2021年12月22日、メディアなど向けに説明会を開き、取引先と決めた抜き取り試験(定期試験)がブレーキ部品とサスペンション部品で正しく行われていなかったと発表した。

» 2021年12月23日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 日立Astemo(アステモ)は2021年12月22日、メディアなど向けに説明会を開き、取引先と決めた試験や検査がブレーキ部品とサスペンション部品で正しく行われていなかったと発表した。

 抜き取り試験(定期試験)が正しく行われていなかったのは、山梨工場(山梨県南アルプス市)で生産するブレーキ部品5製品(9社に納入)と、福島工場(福島県桑折町)で生産するサスペンション部品の2製品(5社に納入)だ。福島工場では14社に納入していた4つのサスペンション部品について、出荷検査にも問題があった。いずれの部品も乗用車向けで、日系自動車メーカーなど合計16社に納入した。山梨工場と福島工場はどちらも旧トキコの拠点だった(トキコは2004年に日立Astemoの前身の1社である日立オートモティブシステムズが買収)。

 現時点で日立Astemoが把握している範囲では、ブレーキ部品は2003年10月から、サスペンション部品は2000年ごろから不適切行為があった。その件数は、ブレーキ部品で5万7000件、サスペンション部品では少なくとも合計1010万件に上る。

品質保証プロセスと不正があった検査について[クリックで拡大] 出所:日立Astemo

 説明会に出席した日立Astemo CEOのブリス・コッホ氏は「定期試験や検査の重要性が意識されていなかった。人材や投資が不十分で、風通しや透明性にも欠けていた。また、定期試験のマニュアルの品質にも問題があり、適正に行うための説明が不十分だった。不適切だと認識した上で意図的に行われていたのか、不適切であると認識されないまま引き継がれてきてしまったのか、現時点ではまだ解明できていない」と語った。

 対象となる部品は安全性や性能に問題はないとしている。不適切行為は、いずれも日立Astemoの社員から日立製作所の品質保証部門に情報提供があったことをきっかけに発覚した。日立製作所の品質保証部門の調査を経て、それぞれの部品の不適切行為は是正された。

 また、グローバルで同様の不適切行為が起きていないか監査を実施した結果、現時点ではこの他の不適切行為は報告されていないという。自主監査の他、他の工場やルーツの異なる会社同士での相互監査を実施した。日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業という異なる企業を統合した環境を生かしながら、人材交流を活性化させるという。

 事実関係や発生した原因を調査するため、日立Astemoと利害関係のない社外弁護士による特別調査委員会を設置した。調査結果を踏まえた事実の全容や、具体的な再発防止策は後日公表する。

山梨工場で起きていたこと

 山梨工場では、ブレーキキャリパー、マスターシリンダー、ブースター、電動制御ブレーキ、マスターシリンダーとは別にブレーキ液を貯留する「分離型リザーバタンク」の5つの製品について、定期試験を実施していないにもかかわらず、取引先への報告書にデータを記載していた。

定期試験が行われていなかったブレーキ部品[クリックで拡大] 出所:日立Astemo

 2020年12月に日立製作所の品質保証部門が品質コンプライアンス監査を実施した際に、日立Astemoの社員が不適切行為について情報を提供。2021年1月にかけて日立製作所の品質保証部門が調査を実施し、不適切行為を確認した。定期試験は2021年1月から実施し、人員の増強など対策を進めて2021年3月までに是正したという。今後、試験データを保管して改ざんを防止する新たな試験機の導入を進めるとしている。

 対象となる製品では、安全性や性能を確認する工程検査や出荷検査については適切に実施されていた。

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