さて、筆者が今回定義したSimulation Governanceを構成する4カテゴリー、9サブカテゴリー、40項目について駆け足で一通り説明してきましたが、どのような受け止め方をされたでしょうか? どれ一つとしてないがしろにはできないことが、お分かりいただけたでしょうか。これらの40項目について、自社、自事業部、自部門がどのような状況、レベルにあるのか、客観的に見通してみたいとは思われませんでしょうか? そこで、筆者が試みたのは、これら40項目について自己診断する仕組みを作ることでした。図2がSimulation Governance診断の質問リストと診断結果のサンプルです。
図2の上側のシートには、40項目のそれぞれに質問と回答する選択肢としてLevel1〜5まで記載されています。自社の現状がどのレベルに相当するかをチェックすることで、数値化する仕組みになっています。そうしますと、例えば、9サブカテゴリーごとに図2下側のスパイダーチャートのような形で、本診断に参加した全社の平均値データと相対比較し、自社のレベルを判断できます。もちろん、個々の40項目について詳細比較することも可能です。
では、本診断に参加された企業の皆さまにとってのメリットを整理してみましょう。
質問内容と詳細なLevel1〜5の診断項目の策定には、筆者の40年近くに及ぶ広範なシミュレーション業務経験が大きく寄与しています。診断に参加された各社は、こうした当社に蓄積された経験や知見を基に、自社の現状を顧みることができます。
回答をするために、自社の状況を調べ、議論し、確認することが必要になるでしょう。これまで着目していなかった項目についても、あらためて気付かされることでしょう。確認する活動を進める中で、あらためて自社の現状を客観的に把握する視点を獲得できます。
参加各社には全参加社のデータを統計処理した取りまとめ情報が共有されます。参加する企業数が増えれば増えるほど、統計信頼性が向上し、世の中的な平均と上位レベルが分かります。項目ごとの頻度分布により、詳細に把握することが可能です。各社の共有コメントにより数字以外の参考情報が得られます。
客観的な視点で自社の相対的な強みと弱みが一目瞭然となりますので、変革プロジェクトにおけるシミュレーションが関わる領域について、どの項目を強化すべきかを客観的に判断、活用でき、ロードマップを策定するための基礎情報および指針として活用できます。
Simulation Governance向上活動を開始した後、本診断を半年に1回あるいは年に1回定期的に行うことで、進展状況を具体的に振り返りながら、かつ定量的に把握できます。継続のモチベーションを得ることもできます。
Simulation Governance診断とその推進活動は2022年から本格的に始動し、現在17社にご参加いただいております。次回からは、診断質問の詳細とともに結果データを示しながら、各項目の数値の意味するところを解説していきます。また、本診断にご参加いただける企業の皆さまを随時募集しておりますので、診断参加にご興味のある方は、本連載を読んだ旨を紹介欄の筆者メールアドレスまでご連絡ください。 (次回へ続く)
最後に筆者からのお願いです。本稿をご覧いただいた読者の皆さまからのフィードバックをいただけると大変励みになります。また、ご意見やご要望を今後の記事に反映させたいと考えております。無記名での簡単なアンケートになりますのでぜひご協力ください。 ⇒アンケートはこちら
工藤 啓治(くどう けいじ)
ダッソー・システムズ株式会社
ラーニング・エクスペリエンス・シニア・エキスパート
スーパーコンピュータのクレイ・リサーチ・ジャパン株式会社や最適設計ソフトウェアのエンジニアス・ジャパン株式会社などを経て、現在、ダッソー・システムズに所属する。39年間にわたるエンジニアリングシミュレーション(もしくは、CAE:Computer Aided Engineering)領域における豊富な知見やノウハウに加え、ハードウェア/ソフトウェアから業務活用・改革に至るまでの幅広く統合的な知識と経験を有する。CAEを設計に活用するための手法と仕組み化を追求し、Simulation Governanceの啓蒙(けいもう)と確立に邁進(まいしん)している。
▼筆者とのコンタクトを希望される方へ:
件名に「Simulation Governanceについて」と記載の上、keiji.kudo@3ds.comまで直接メールご連絡をお願いします。
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