今回発表したデジタルアイデンティティーの共通プラットフォームは、日立の国内シェアトップの指静脈認証技術と、生体情報から生成した秘密鍵をシステムに残さない技術であるPBI(Public Biometric Infrastructure、公開型生体認証基盤)を中核技術としている。生体認証としては、指静脈認証に加えて2023年2月に発表したパナソニック コネクトとの提携に基づき同社の顔認証技術も選択できるようになっている。指静脈認証は認証精度が顔認証よりも高いものの装置による認証に2秒かかるため、スポーツクラブのチェックインや自動改札のようなより高速の認証が求められる用途では顔認証を用いることになるとみられる。
なお、ユーザーが共通プラットフォームに登録する際には、まずWebシステムから必要情報を入力した後に、東武ストアなど指静脈認証装置のある店舗で免許証やマイナンバーカードなどで本人確認をしてから生体認証情報とのひも付けを行う。登録情報の変更は、2要素認証などを経てWebシステムで行うことになる見込みだ。
ユーザーは同プラットフォームを利用することで、スーパーやコンビニでの買い物の際に決済やポイント付与、本人確認といった作業を生体認証で全てまとめて行えるようになる。また、同プラットフォームへの参加企業が増えれば登録情報の一括変更も可能になる。2023年度内に実証実験を予定している販促キャンペーンとの連携などもより容易になるという。
参加企業にとっては、生体認証として指静脈認証と顔認証を用途に合わせて選択できるとともに、PBIによってクラウドに保管している公開鍵データから生体情報を復元できないという安心感をユーザーに提供できる。共通プラットフォームであることから、各企業が個々に生体認証技術を導入するのと比べてシステム構築の負荷を大幅に軽減できる。
東武は、2023年度内の東武ストアでの先行導入を皮切りに、プラットフォームの参加企業に対するロールモデルとなる形で東武グループ内での業種横断した利用を進めた後、プラットフォーム参加企業との間で業種横断した利用を実現することで、社会インフラとしての拡大/定着を図りたい考えだ。山本氏は「鉄道の自動改札への導入も視野に入れているが、まだ方法や時期は決まっていない。個人的にはなるはやで導入したいと考えている」と述べる。なお、鉄道の自動改札に導入するとなると、東武の鉄道路線とつながる私鉄や地下鉄駅の自動改札にも生体認証装置の導入が必要になるため、それらの企業が運営する商業施設などに生体認証の共通プラットフォームが広がることも期待できそうだ。
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