バインダージェット式金属3Dプリンタによる金型レス部品の量産に向けて協業:金属3Dプリンタ
住友電気工業は三菱商事テクノスと協業し、バインダージェット式3Dプリンタを使用した金属部品の量産事業を立ち上げるプロジェクトを開始した。金型レスの部品製造を導入し、製造業のデジタル化を加速させる。
住友電気工業は2023年7月27日、三菱商事テクノスと協業すると発表した。同月から、GE Additiveの最新バインダージェット式3Dプリンタ(BJ)装置を使用した、製造業向け金型レス金属部品の量産事業を立ち上げるプロジェクトを開始している。
3Dプリンタで金属部品を製造する方法は、レーザーで金属粉末を溶融、凝固させながら造形するレーザーパウダーベッド式(LPBF)を中心に高付加価値部品への適用が広がっている。バインダージェット方式とは、金属粉末をバインダー(結合剤)で固めて焼結する工法で、設計の自由度が高いことや金型レスであることに加え、LPBFと比較して造形速度が速く、生産性が50〜100倍となるため、大幅に製造コストを低減できる。
BJ式工法の概要と生産性比較イメージ[クリックで拡大] 出所:住友電気工業
最新のBJ方式は、従来の鋳造法に迫る材料特性を有しながら、従来工法では製造が困難だった、複雑な形状の高付加価値部品や大型部品を低コストで量産できる。
BJ部品事例(クローズインペラー:直径25cm、20cm) 出所:住友電気工業(写真提供:GE Additive)
BJ部品事例(油圧マニホールド:12×9cm) 出所:住友電気工業(写真提供:GE Additive)
同プロジェクトでは、国内製造企業での実証を経て、量産用BJ装置の国内設置を進めていく。さらに、自動車や重工業、産業機械、医療など高付加価値部品が必要となる分野に3Dプリンタによる製造を導入し、製造業のデジタル化を加速させる。
⇒その他の「金属3Dプリンタ」の記事はこちら
- 金属3Dプリンタが日本製造業にもたらす影響とは、最新動向と今後の展望
2022年11月8〜13日まで東京ビッグサイトで開催された「第31回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2022)」において、近畿大学次世代基盤技術研究所 技術研究組合 次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)の京極秀樹氏が「金属積層造形技術の最新動向と今後の展開」をテーマに講演を行った。
- 最新金属3Dプリンタが出そろったJIMTOF2022、海外のノウハウ先行に警鐘鳴らす声も
「第31回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2022)」(2022年11月8〜13日、東京ビッグサイト)では特別企画として、AM(Additive Manufacturing、積層造形)エリアが設けられ、多くの企業が金属3Dプリンタの最新機種を出展した一方で、日本の現状に危機感を訴える声もあった。
- 広がる金属3Dプリンタと工作機械の融合、それぞれの技術方式の特徴
2020年11月16〜27日にオンラインで開催された「第30回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2020 Online)」において、主催者セミナーとして、東京農工大学 工学府 機械システム工学専攻教授の笹原弘之氏が登壇。「金属材料のAdditive Manufacturingの基礎から見える未来予想」をテーマとし、金属AMの代表的ないくつかのプロセスの基本原理とメリットやデメリットについて述べるとともに、国内外の金属AMの最新動向について紹介した。
- AM(アディティブ・マニュファクチャリング)が実製品活用されない国内事情とは何か
新しいモノづくり工法であるAMは、国内でも試作用途では導入が進んできている一方、実製品用途となると全くと言っていいほど活用されていない。本連載では、何がAM実製品活用の妨げとなっており、どうすれば普及を進められるか考察する。
- AM実製品活用に企業はどのように取り組むべきか
本連載では、日本国内で何が金属3DプリンタによるAM実製品活用の妨げとなっており、どうすれば普及を進められるかを考察する。今回は、AMの実製品活用に投資するための企業の考え方、進め方について考える。
- 金属3DプリンタによるAMで先行する海外勢への日本の対抗策とは何か
本連載では、日本国内で何が金属3DプリンタによるAM実製品活用の妨げとなっており、どうすれば普及を進められるかを考察する。今回は、実製品活用で先行している海外勢への対抗策について考える。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.