金属3DプリンタによるAMで先行する海外勢への日本の対抗策とは何か金属3DプリンタによるAMはなぜ日本で普及しないのか(3)(1/2 ページ)

本連載では、日本国内で何が金属3DプリンタによるAM実製品活用の妨げとなっており、どうすれば普及を進められるかを考察する。今回は、実製品活用で先行している海外勢への対抗策について考える。

» 2023年06月21日 11時00分 公開

 Additive Manufacturing(アディティブマニュファクチャリング、積層造形。以下、AM)の実製品活用に取り組むとなると、大きく先行している海外との競合は近い将来避けられません。それでは、国内企業がAM実製品活用において先行している海外に対抗できる可能性はあるのでしょうか。あるとすれば、それはどのような手法でしょうか。

⇒過去の「金属3DプリンタによるAMはなぜ日本で普及しないのか」の記事はこちら

AM実製品活用における海外勢への日本の対抗策

 そのヒントは海外のAM実製品活用事例や、海外の大手AM装置メーカー、研究機関の活動方法に表れています。

 過去の連載でも触れてきましたが、設計試作確認コピー出力としてのAM活用なら、AM装置メーカーは装置単体の性能や特徴、運用方法を説明するだけで、ユーザーへの販売業務は十分でした。しかし、実製品用途でのAM装置販売業務となると、設計、材料、装置設定、後加工、品質保証とユーザー対応すべき項目は大変多岐にわたります。

AM活用に必要なソリューション AM活用に必要なソリューション[クリックで拡大]出所:日本AM協会

 最近の海外大手AM装置メーカーは、それらの問題解決のためにAMコンサルティングを行っています。これらの大手AM装置メーカーの国内説明会に参加すると、6時間以上にわたる説明会のプログラムの中で、AM装置の説明(機種戦略)は30分程度しかされません。それ以外はAM活用に必要な各種ソリューション説明や事例紹介をしています。

 国内のAM装置メーカーやAM関連ビジネスを行う企業は、このような海外AM装置メーカーの動きは把握していると思います。ですが、AM実製品活用の事例が極端に少ない国内では、このような海外のAMビジネスに対抗する人材や経験が、大きく不足していることは言うまでもありません。

 海外でAMビジネスをけん引している航空宇宙防衛産業が、AM実製品活用の旗振り役になるのが難しい国内においては、誰が、どのようにして、AM実製品活用をけん引できるのでしょか。以下で4つのポイントを紹介します。

1. AM装置の単体性能でAM活用を検討しない

 AMを設計試作確認コピー出力装置として活用する場合は、AM装置性能が重要な選択ポイントになる事は1回目の寄稿でも記載した通りです。AM装置単体の性能では、早くからAMを実製品で活用し多くの造形経験(造形設定:レシピ)を持ち、AM装置特許も多く取得している海外メーカーと競合するのが難しいことは、皆さまのご理解の通りです。

 特許の有効期間が切れてAM装置を製造できても、AM造形経験(造形設定)で海外企業に追い付くには、先行する企業より多くの努力が必要になるのは想像ができると思います。前述の通りAM実製品活用は、AM装置単体技術だけで成功しないことを、海外AM装置メーカーの活動が示しています。

 しかし、現工法での技術(経験)とはいえ、国内には世界に誇れる設計、材料、工程管理、品質保証の取り組み手法(経験)があります。AM対応の技術内容ではなくても、取り組み手法(問題解決手法等)をAMに対して発揮できれば、「AMデジタル製造ソリューション」として世界と対抗できる可能性があると考えます。

 乱暴で簡単な言い方をすれば真摯に協力して、新技術へ挑戦する経験を生かし、過去の技術経験は白紙にして、AM用に思い切って切り替える、そんな向き合い方になるのではないでしょうか。

2. 官庁、自治体、研究機関との産官学連携の必要性

 AM実製品への取り組みには膨大な費用と時間が必要で、それに見合うビジネス(利益)が国内で見えないことは、連載の1回目でも記載した通りです。

 このような状況では、慎重かつ安定的な経営を重視する国内企業は、AM実製品活用に大規模な投資を行う判断をするのは難しいでしょう。そこで、日本AM協会設立の目的でもある、公的機関(官庁、自治体、研究機関)との連携(産官学連携)が必要になると考えます。企業単体では取り組みが難しい課題(AM)には、産官学連携こそ重要な解決策でしょう。官庁、自治体にはAM活用のために、ぜひ具体的な普及支援事業を展開していただきたい。

 ものづくり補助金や事業再構築補助金などを活用しては? との意見を今まで多数聞きました。ただ、これらの補助金活用を検討する企業は、ビジネス(利益)に直接つながる装置(現工法装置)での補助金申請は行っても、ビジネスの見えないAMでの補助金申請は、設計試作確認コピー出力用途以外で行いません。安価にAM装置導入を優先させる手法の事業では、導入後に企業の経営リスク増大につながることが考えられ、AM実製品活用促進にはなりにくいと思われます。

 そこでAM活用促進に効果のある事業は、企業に対して具体的にAMを経験させる事業ではないかと考えます。成果の見えにくい経験や実証に事業(投資)を行うのは、成果の判断が難しく事業実施のハードルが高いことは理解できます、しかしAM実製品活用に国内で必要なのは、企業側の具体的なAM経験、実証ではないでしょうか。

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