日本AM協会の前身である任意団体3Dものづくり普及促進会が協力した、2020年の経済産業省近畿経済産業局による事業「Kansai-3D実用化プロジェクト」では、大手企業5社、中小企業32社を実施対象として、各種AMの検討(パーツ選択、設計変更)、造形(樹脂、金属)、検証(品質)を行い、実施報告書作成および成果発表において、参加企業含め多くの企業から高い評価と共感を得ています。
この事業には、大学や公設試(都道府県の工業技術センター)や研究機関から、造形や技術アドバイスの協力も得ています。国内の大学、公設試験研究機関には、AMについての多くの技術蓄積やデータがあり、これらを活用することこそが、海外から遅れている国内AM実製品活用へのスタートダッシュをもたらすと考えます。
AM造形の知見を持った国内企業はどこかを考えると、当然、AM装置メーカーと思われるかもしれませんが、私はAMサービスビューロ(造形請負企業)だと思います。
装置メーカーより、さまざまな企業からいろいろな設計形状の造形を受け、成功/失敗事例を経験したサービスビューロは、AM造形のプロフェッショナルです。ただし価格と納期だけの効率を重視したAMサービスビューロではなく、問い合わせ時にAMの技術的内容(メリット/デメリット、リスクや問題点など)の打ち合わせに対応できるサービスビューロを活用すべきです。
日本AM協会の会員には、この点に対応できるサービスビューロの企業が所属しています。それらの企業はAM活用(ビジネス)促進のために、現時点ではAM技術の囲い込みよりは公開が優先すると考えているからです。
造形依頼企業の個別形状やAM造形による技術情報は個々企業の情報(ノウハウ)なので公開はできませんが、サポート造形の有無や付き方、造形時の熱歪有無(アスペクト比)、造形配置による造形効率など過去のAM造形経験から蓄積された基本的AM技術情報については、AMサービスビューロとの接触により効率的に情報入手できると考えます。
国内の多くの企業において現在必要なAMの技術的情報には、基礎的情報が多く、これらは世界から遅れる国内AM活用においては、ほとんどが隠すべき企業ノウハウになりません。
設計試作コピー出力用途が主の国内AM技術については、その多くを基礎的情報として国内企業で共有し、AM実製品活用へのスピードアップに活用すべきです。それくらい国内はまだAMの基礎的情報に飢えていると考えます。
企業の思考が早く実製品活用に向けられるように、可能な限りAM技術情報は公開していくべきでしょう。国内の多くの企業が、まだAMについて基礎的レベルアップをしなければならない状態なのです。
次回は、いよいよ企業としてAM実製品に取り組むために、やるべきことは何かについて記載いたします。
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