パナソニックHDは、2023年度第1四半期の連結業績を発表。米国IRA法による補助金や、パナソニック液晶ディスプレイの解散と債権放棄による影響などから過去最高の純利益を達成した。
パナソニック ホールディングス(以下、パナソニックHD)は2023年7月31日、2023年度(2023年3月期)第1四半期(4〜6月)の連結業績を発表。米国IRA(Inflation Reduction Act)法による補助金や、パナソニック液晶ディスプレイの解散と債権放棄による影響などから過去最高の純利益を達成した。
パナソニックHDの2023年度第1四半期の連結業績は、売上高が前年同期比3%増の2兆297億円、調整後営業利益が同41%増の928億円、営業利益が同42%増の904億円、税引き前利益が同48%増の1087億円、当期純利益が同4.1倍となる2009億円となった。セグメント別では、インダストリー分野がICTや中国FA市場での市況悪化により減収減益と厳しい状況が続くが、その他のくらし事業、オートモーティブ、エナジー、コネクトなどの主要分野が増益となっている。
パナソニックHD 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏は「いくつか外部要因で大きなものがありセグメント別でも良いところと悪いところがあるが、一時的な影響を除いた現在の状況はおおむね期初の計画通りだ」と手応えについて語っている。
影響として大きかった要因の1つが、連結子会社であるパナソニック液晶ディスプレイ(PLD)の解散と特別清算だ。パナソニックHDでは2019年11月に液晶パネルの生産を終了すると発表し、その後2022年度まで供給責任を果たすために販売を続けてきたが、今回その役割を終えたと判断し、PLD解散を決めた。その特別清算に際し、債権放棄を行ったことから、法人所得税費用が減り繰延税金資産の計上などが1213億円減少するなど、純損益で一時的ではあるが大きなプラス効果を生み出している。
もう1つ大きな影響をもたらしているのが、米国IRA法による補助金だ。IRA法は、過度なインフレの抑制とエネルギー政策を推進する法律であり、エネルギー関連製品に対する税控除などを行うものだ。その中で、EV向け電池などの販売に関する税控除を行うSection 45X(Advanced Manufacturing Production Credit)では、米国内で生産した電池セルを販売した場合、1kWh当たりで35ドルの税控除などが受けられる。この法律の細則についてはまだ決まっていないが、今回の第1四半期決算から、パナソニックHDが受け取れるであろう補助金見合いの計上を開始した。
パナソニックHDの場合は、Tesla(テスラ)と共同で取り組むネバダ州の工場が、既に年間約38GWh分のEV用電池を生産しており、今回の米国IRA法の対象となる。ただ、この工場はパナソニックHDとテスラが共同で運営しており、補助金をテスラと分配する必要がある。第1四半期の補助金見合い総額は450億円で、その内208億円をパナソニックHDの取り分として調整後営業利益に組み込んだ。242億円分は顧客への有効活用手段をテスラと検討する。補助金の総額はパナソニックHDとして受け取り、その後、一部をテスラ側に切り出すために、会計処理としては売上高に対し242億円分のマイナス効果が生まれるという。
梅田氏は「米国IRA法の趣旨を踏まえて補助金を運用するため、基本的には全ての金額分を米国のクリーンエネルギー拡大に何らかの貢献をする施策に投資する」と述べている。この補助金については継続的に発生するため、年間では調整後営業損益で800億円、当期純損益で1000億円のプラス効果が生まれる。また、ドルベースであるために為替の影響がプラスに働く可能性もあり「影響額については第2四半期でも見極めを進めていく」(梅田氏)としている。
これらのプラス要因があるため、2023年度通期の業績予想も純損益については従来の3500億円から4600億円と大幅な上方修正を行っている。「今回はセグメント別の見通しは変更していないが、需要動向については期初想定と変わってきていることも多いため、第2四半期以降修正の必要性などを検討する」と梅田氏は述べている。
また、決算説明の最後には2023年5月の経営方針で示した通り、あらためて2023年度中に事業ポートフォリオの再編に取り組んでいく方向性を強調した。「グループ共通戦略との適合性と、事業の立地と競争力という2つの軸で、事業ポートフォリオの見直しや入れ替えに取り組んでいく」(梅田氏)。
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