「車載用電池はPDPの二の舞とはならない」パナソニックHD楠見氏が語る2年間製造マネジメント インタビュー(1/2 ページ)

パナソニック ホールディングス グループCEOの楠見雄規氏は報道陣の合同インタビューに応じ、就任後2年間の手応えについて語るとともに「成長へのギアチェンジ」とする中で今後の方向性について説明した。本稿では「2年間の振り返り」「車載用電池」「環境への取り組み」についての質疑応答の内容を紹介する。

» 2023年05月25日 07時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 パナソニック ホールディングス グループCEOの楠見雄規氏は報道陣の合同インタビューに応じ、就任2年を経てここまでの手応えを語るとともに「成長へのギアチェンジ」と位置付ける今後の方向性について説明した。本稿では「2年間の振り返り」「車載用電池」「環境への取り組み」についての質疑応答の内容を紹介する。

ソニーグループの背中が見えるような競争力を

―― 就任以降「創業者の基本的な理念に立ち返る」ということを強く訴えてきた。この2年間でどういう変化があったと捉えているか。

楠見氏 100%ではないが、徐々に変化し理念の浸透が進んできたところなども出てきつつある。実は、理念の浸透を進めるのは、日本の企業だけでなく海外の企業でも多い。例えば、米国のAmazon.comでも「Amazon's Leadership Principles」などがあり、日々の活動の中の指針としている。パナソニックグループではそこまでの解像度のものは用意できなかったが、経営基本方針や綱領、七精神などを示す中で、24万人全員というわけではないかもしれないが、重要性を理解してもらい、活動に反映してもらっている社員が増えていると感じている。

photo パナソニック ホールディングス グループCEOの楠見雄規氏

―― 2年間はオペレーション力の強化を進めることを訴えてきた。あらためてなぜオペレーション力が落ちたと分析するか。それが現在は2年間の取り組みの中でどのように変わってきたのか。

楠見氏 パナソニックグループでも2000年以前はオペレーション力を強化することに力を入れていた時期があった。しかし、業務が定型化され枠組みも含めて決まった業務ルールに従って仕事をするということが長く続いた。そこで、新たな枠組み作りを伴うような動きがとりづらくなっていったことが要因だと考えられる。

 また、オペレーション力にも2つの方向性がある。1つは金銭を効率良く稼ぐという方向性、もう1つが価値を作るという方向性だ。金銭を効率よく稼ぐという方向性は、財務指標として営業利益に表れるために非常に重視されてきた。一方で価値を生み出すという方向性では財務指標としては営業キャッシュフローなどに表れるものの、そこはあまり重視されてこなかった。その中で金銭的な効率化の観点に寄っており、生産性のみが問われ新たな枠組み作りのような動きが少なくなっていたようにも感じている。

 2年間のオペレーション力の強化では、評価も含めてそういうものの見直しを徹底的に進めてきた。例えば、現場の強化を考えると財務指標で考えても、営業利益だけでなくキャッシュコンバージョンサイクルのような指標の方が、正しい評価につながる。その中で、全てで完璧にできているかといわれるとそうではないが、代表拠点や事業など一部では業績につながるような成果も生まれてきている。まずは「やればできる」ということを実感してもらえるようにはなってきた。そこは成果だと感じている。今後はこうした成果を横展開していくことが必要になる。

―― グループ戦略では成長へのギアチェンジということを訴えた。どういう考えか。

楠見氏 過去の2年間の取り組みにおいて、財務的に明確な成果を示すことはできなかったが、部門や拠点を見れば成果を生み出せているところが数多くある。こうしたものを横展開していくのは従来よりもスピードを上げて進めることができる。そういう意味でのギアチェンジだ。

 同時に2年間は抑えていたポートフォリオマネジメントについても手を付けることになるが、これも従来の考え方ではカーブアウトするような考え方が多かったが、基本的には事業の正当な成長に対して何が必要かということを起点に考える。事業の成長に資金需要が大きいとなると、事業会社単位ではなくホールディングスでサポートするのか、それとも外で募った方がいいのかなど、さまざまな判断が出てくる。こうしたことを進めながら、成長のスピードをトップスピードに引き上げていく。

photo 競争力強化の2年間の実績[クリックで拡大] 出所:パナソニック ホールディングス

―― ソニーグループもさまざまな改革を通じて今非常に好業績となっている。既に業態は大きく違っているが、かつてのライバルとしてどう感じるか。

楠見氏 ソニーグループはさまざまな改革をやってきて業績も非常に良い。それでありながら、金融事業の上場を視野に入れるなど次を見据えた大きな体制変革を進めるなどダイナミックでスピードも速い。われわれはそれに比べてスピードが遅いと感じている。パナソニックグループもコングロマリットだと指摘されるが、ソニーグループはそれ以上に多様な業態を抱えているのに、1つ1つの事業が競争力を持って、コングロマリットメリットを生み出している。こうした経営の力をトップが代わりながらも引き継いでいるのは身近なお手本だと捉えている。われわれも早くソニーグループの背中が見えるようにしていく。

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