パナソニックHDは北米車載電池を重点強化、3拠点目を新設し2030年度に200GWhへ製造マネジメントニュース(1/3 ページ)

パナソニック ホールディングスは、グループ戦略を発表。環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT」をより具体化して取り組みを進めていくとともに、重点領域として「車載電池」「空質空調」「サプライチェーンマネジメント(SCM)ソフトウェア」などを位置付け、積極的な投資を進めていく方針を示した。

» 2023年05月19日 06時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)は2023年5月18日、グループ戦略を発表。環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT」をより具体化して取り組みを進めていくとともに、重点領域として「車載電池」「空質空調」「サプライチェーンマネジメント(SCM)ソフトウェア」などを位置付け、積極的な投資を進めていく方針を示した。

「Panasonic GREEN IMPACT」を行動計画を基に推進

photo パナソニック ホールディングス グループCEOの楠見雄規氏

 パナソニック ホールディングスでは、2021年4月(ホールディングス体制への移行前)に楠見雄規氏がCEOに就任し「2年間は全事業で競争力強化に集中する」(楠見氏)という方針を示していた。そのため、まずは過去2年間の競争力強化の取り組みについて振り返りが行われた。

 パナソニック ホールディングスの競争力強化は、長期的視点に立ったビジネスモデルなどを含めた戦略立案と、変化対応力を含めたオペレーション力強化という2つの方向性で進められた。

 長期的視野に立った戦略立案の1つとして定めたのが、地球環境への貢献を示した長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」である。2050年までに現在の世界のCO2総排出量の1%に当たる3億トン以上の削減インパクトの実現を目指し、そのマイルストーンとして、2030年度(2031年3月期)までに「全事業会社のCO2排出実質ゼロ」と「9300万トンのCO2削減貢献」を実現する。また、その具体的な計画として2024年度までの行動計画「GREEN IMPACT PLAN 2024(GIP2024)」を定めている。GIP2024では、CO2ゼロ工場を2024年度までに37拠点達成を目標としているが、現在までに28拠点で達成。特に車載機器を扱うパナソニック オートモーティブシステムズ(PAS)では全生産拠点でCO2ゼロ工場化を実現したという。

 さらに、地球環境に対する企業活動の正当な評価を浸透させるために「CO2削減貢献量」の認知活動を推進した。CO2削減貢献量は「社会や顧客のCO2排出量において、製品やサービスを導入しなかった場合と導入した場合の差」を「導入しなければ発生されていたCO2排出を回避した」と定義するものだ。こうした考えをCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)27の日本パビリオンでコンセンサスを形成し、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)やGXリーグでCO2削減貢献量についてのガイダンスを発表している。加えて、2023年4月15〜16日に開催されたG7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合において「削減貢献量を認識することに価値がある」と成果文書に組み込んでもらうことに成功したという。

photo 「CO2削減貢献量」の認知活動[クリックで拡大] 出所:パナソニック ホールディングス

オペレーション力強化は道半ば

 オペレーション力の強化としては、改善活動を中心とした現場革新の徹底を推進してきた。例えば、事業会社ごとに現場革新の代表拠点を設定し、高い目標を掲げKPI(重要経営指標)の最高記録を更新することで生産性向上を繰り返し進める様子を確立する。さらに、それを横展開することに取り組んできた。楠見氏は「改善の伝道師を育てながら、事業会社ごとに代表拠点を決めて進めてきた。PASの敦賀工場は、こうした代表拠点の1つだ。生産リードタイムを50%短縮し、安全在庫を半減(2021年10月比)するなど、大きな成果を残すことができている。ただ、こうした成果を全ての生産拠点に横展開というわけにはいかなかった」と反省の弁を述べる。

 加えて、データドリブン経営のためにデジタル基盤の構築など変革を行う「Panasonic Transformation(PX)」を推進。事業部横断でのデータ利用や一部のクラウド化などを実現した他、事業トップ主導で業務の見直しやプロセス標準化、IT活用などを一体で推進しているという。

 ただ、こうした取り組みについても楠見氏は「まだ道半ばだ」と評価する。「競争力強化と位置付けた2年間だが、財務指標として発揮するところまではいかなかった。営業利益などを見ても、上海ロックダウンの影響や材料不足などの外部要因の影響度を抑えるところまではできても、それを打ち返すところまではできなかった。また、全ての事業が競争力強化で経営環境の変化に打ち勝てたかというとそうではなかった」(楠見氏)としている。

photo 競争力強化の2年間の実績[クリックで拡大] 出所:パナソニック ホールディングス

 これらの結果を踏まえ、2023年度からは競争力強化は引き続き進めながらも、成長ステージへとギアを上げるフェーズとする。事業ポートフォリオの入れ替えなども検討しながら、重点投資領域を明確化し、成長への道筋を示していく。

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