さまざまなシステムが登場、普及することで部門連携とデータ活用が進んでいますが、さらなる活用が望まれるデータがあります。それが“埋もれた図面データ”です。
設計部門では、日々多くの図面が作製され、データとして保存されていきます。図面は、購買、製造、生産管理などの各部門に回っていきます。図番、図名、材質、仕様、部品表などの設計情報が保存され、購買情報、顧客情報なども発生し、各システムに保存されていきます。各システムが連携していれば、部門を越えての情報活用が可能です。
しかし、図面データを見て、活用するとなると簡単にはいきません。例えば、図面そのものをデータとして見たい場合は、図番が分かっていれば図面を探すことは容易にできます。しかし、これが図名だけになると、同じ名前の図面が多く存在する場合があるため、素材や顧客の情報も合わせて該当図面かどうかを判断しなければなりません。類似した図面のデータを活用したいとなると、さらに難しくなります。仕様や図番、図名などから推測して図面ファイルの候補を絞り、それら全てを開いて確認していかないと見つけることができません。探し出すのに時間がかかるだけでなく、多くの場合は“見つけることすらできない”でしょう。
図面データとは、図番や図名に限らず、図面に描かれている全てのデータを指します。図面は、顧客の要望や製品の仕様を具現化したものです。材料調達から加工、組み立て、検査に至るまで、製造の全てに関わる重要な情報を持っています。しかし、前回も述べた通り、図面データは検索性が悪く、現状では探すのが困難なものです。その結果、使われずに埋もれてしまう図面データは日々増え続けています。保存して埋もれさせている間は、データに価値は生まれません。図面データの持つ多くの価値を引き出して活用し、各部門の情報と連携させていくことが必要です。
図面データを各部門の情報と連携させることは、大変革時代を迎える製造業において急務といえます。多くの場合、図面データは一義性を保つため、設計部門が管理しています。必要に応じて紙に出力して各部門に渡しているような会社は今も多いと思います。時間もコストもかかり、あまり効率的とはいえません。設計部門にとっても、その都度対応するのは、かなりの負荷になっているのではないでしょうか?
例えば、図面データを各部門で見ることができて、システム上で図面受け渡しができれば、それにかかる時間、コストは不要になります。単に図面データが見られるだけでなく、各部門の情報と連携させることができれば、得られる効果はさらに多くなります。部門連携を強め、製造プロセス全体の最適化も進むでしょう。設計から購買、製造、生産管理、検査の流れが大きく変わります。ただし、図面データの活用と各部門の情報との連携を図るには、図面に記載されている全ての内容をキーとして検索できるシステムが必要です。それにより、図面データの検索性を向上させ、活用しやすい形に変えていかなければなりません。
次回は、設計、製造、調達部門における、図面データと各部門の情報との連携による具体的な効果について紹介していきます。 (次回へ続く)
白井 陽祐(しらい ようすけ)
キャディ株式会社 DRAWER事業部 事業責任者
株式会社フリークアウトにて、SMBからナショナルクライアントまで幅広い顧客にDSP/アドネットワークの提案、DMPの導入支援などを行う。2019年6月よりキャディ株式会社に移り、プロダクトマネジャーを経験した後、現職に至る。
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