大変革時代を迎える製造業。従来の縦割り、属人化したモノづくりから脱却し、全ての工程でのプロセス改革を実現するには、図面データや発注実績などの製品データを活用した部門連携が欠かせない。連載第4回では設計情報や購買情報を管理するシステムの歴史を振り返るとともに、埋もれた図面データの活用意義や別々に管理されている情報の連携の必要性について解説する。
前回は、図面データを活用する際の課題と、図面データの資産としての可能性について解説しました。今回は、設計情報や購買情報を管理するシステムの歴史を見ていくとともに、埋もれた図面データの活用意義や、別々に管理されている情報の連携の必要性について紹介していきます。
製造業では、部品や材料の調達から、設計、製造、物流、販売に至るまでの間に、さまざまな情報が発生します。事業の規模が大きくなればなるほど情報量も膨大になり、人力だけで管理することは困難になります。業務や経営の最適化を目指すには、情報を利用できる形に変え、一元管理することが必要です。
そうしたことを実現するために、これまでさまざまなシステムが生み出されてきました。部門連携とデータ活用の重要性を考えるに当たり、いま一度その歴史を振り返ってみましょう。
1970年代ごろから普及したのが「MRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)」です。MRPでは、過去の販売量から、部品や原材料などの資材の所要量を分析して、在庫数や発注時期などの生産情報を計画、管理します。MRPは1980年代に入り、「MRP2(Manufacturing Resource Planning:生産資源計画)」へと発展します。これにより、資材や在庫に加え、生産に必要となる人員、設備、費用までを含めて生産計画が立てられるようになりました。
1990年代になると、「ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)」が普及してきます。ERPは資材、在庫、設備などの生産に直接関わる部分に加え、会計、人事、顧客管理などの領域まで、生産部門以外も含めた経営に関わる全てのシステムを一元管理するものです。そのため、「統合基幹業務システム」とも呼ばれています。
ここで話を生産、設計開発の部分に戻します。1980年代ごろからCADが設計現場に普及し始めたことにより、図面を紙で作成していたときよりも、設計に関わるデータが膨大な量になっていきました。そのため、設計データを一元管理する需要が出てきます。そこで開発されたのが、「PDM(Product Data Management:製品データ管理)」です。図面などの設計データやBOM(部品表)、コスト、仕様といった製品データが一元管理できるようになりました。
2000年代になると、開発力や企業競争力の強化を目的として、製品データに加え、生産、調達、変更、廃棄といった製品のライフサイクルに関わる情報を、部門を越えて一元管理する需要が出てきます。そこで登場したのが「PLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)」です。これにより、今まで設計、製造の部門で活用されていた製品データを、購買などの他部門の持つデータと連携させて活用できるようになりました。
他にも、製造業でデータを管理するシステムとしては、1980年代ごろから登場した「SCM(Supply Chain Management:サプライチェーンマネジメント/供給連鎖管理)」や1990年代ごろから登場した「CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)」などもあります。SCMは小売りや卸売り、部品のサプライヤーなどの製品の流通に関わる企業が情報を共有することで、仕入れ数量と販売数量を一致させるなど、サプライチェーンの最適化や効率化を図るシステムです。一方、CRMは顧客の購買履歴や属性を管理することで、個別の顧客の要望に合わせて最適な製品を提案、製造するシステムです。
コンピュータ技術、ITの発展は、扱うデータ量を飛躍的に増大させました。それを人力だけで処理することは、もはや不可能といえます。増え続けるデータを価値あるものに変え、部門連携とデータ活用を実現するためにも、積極的なシステム導入が求められています。
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