モーダル解析を使った疲労強度予測の例を紹介します。この方法の利点は、実稼働状態の機械にひずみゲージを貼って応力を測定しなくて済むことと、荷重回数を数える必要がないことです。ちなみに、荷重回数を数える方法として「レインフロー法」がありますが、筆者の勉強不足のせいか、実践経験のない人が書いたレインフロー法の説明を読んだせいかは分かりませんが、筆者はいまだにレインフロー法で荷重回数を数えることができません。
モーダル解析結果の変位や応力は正規化された後の値で、ソフトによって正規化の方法が違うので同じ振動モードでも異なった値が出力されます。つまり、値はでたらめです。図3にモーダル解析結果の変位と第一主応力を示しますが、でたらめといっても変位と第一主応力には関係があり、変位に応じた応力となります。
ここで述べる疲労強度予測を適用するには、以下の条件が必要です。
手順は以下となります。
1.実稼働状態の各振動モードの最大変位を測定する。これは振動変位を周波数分析して振幅を求めるか、振動加速度の振幅を角振動数の二乗で割って求める
2.シミュレーションによる各振動モードの最大変位を読み取る
3.シミュレーションによる応力値を読み取る
4.実稼働状態の応力振幅σa_iは次式となる
5.i次モードの荷重回数は次式で求める
6.材料のS-N曲線から上記応力振幅での寿命Niを求める(図4)
7.線形累積損傷側(参考文献[1])から損傷度Dを求める
8.Dが1[-]よりも大きければ疲労破断することになる
上記の方法を実験的に確認した文献や論文は存在しないと思いますので、十分な安全率をとる必要があります。また、部材に平均応力が発生しているときは、修正グッドマン線図などを用いてS-N曲線を下方向にオフセットしなければなりません。
以上でシミュレーションのモーダル解析の説明は終わりです。次回は、実験モーダル解析です。モーダル解析ソフトを使わずに「Excel」で実験モーダル解析をやってみましょう! (次回へ続く)
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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