熊谷組と帝人は、オフィスビルなど耐火建築物に利用可能な高機能繊維強化集成材の開発に着手したと発表した。
熊谷組と帝人は2023年7月13日、東京都内とオンラインで会見を開き、オフィスビルなど耐火建築物に利用可能な高機能繊維強化集成材の開発に着手したと発表した。帝人の高機能繊維強化集成材「LIVELY WOOD」を木材の芯材として、熊谷組の木質耐火部材「環境配慮型λ-WOODII」による耐火被覆層を施す形で両社の技術を融合した梁を用い、耐火建築物において最上階から数えて14階までの梁に求められる2時間耐火性能を確認したという。今後は、耐火建築物で使用するための認証取得を進めながら、カーボンニュートラルなどに貢献する環境負荷の低減が可能な機能性を訴求し、中規模オフィスビルなどの木造建築の実物件採用に向けた提案を進める。
帝人のLIVELY WOODは、集成材の上下にCFRP(炭素繊維強化樹脂)による補強層を積層したハイブリッド集成材である。通常の集成材と比べて高い曲げ剛性と曲げ強さを備えており、建築物の梁として用いる場合梁断面積を32%削減できるなどの効果が得られるので、木造建築物の用途を拡大できる。ただし、通常の集成材と同様に耐火性はなく、耐火性能が必要な木造建築物に用いることができなかった。
一方、熊谷組の環境配慮型λ-WOODIIは、芯材を木材として、その周囲に強化石こうボードを用いた耐火被覆層を施すことで耐火性能を確保した木質耐火部材であり、木造建築物に適用できる。ただし、使用する芯材は通常の集成材が基本で、オフィスビルなどに求められる建築物の大スパン化には集成材の性能が不足する可能性があった。
今回の両社の協業によって、LIVELY WOODと環境配慮型λ-WOODIIそれぞれの得手不得手を補完し、LIVELY WOODを芯材として環境配慮型λ-WOOIIの耐火被覆層を施すことで、耐火建築物にも適用可能な新しい高機能繊維強化集成材を実現できるようになる。
両社の技術を融合した集成材は、建材試験センターにおいて梁の耐火試験を行っており、2時間耐火性能を有することを確認している。
建築業界にも求められているカーボンニュートラルの実現に向けては、建材として木材を採用することが貢献するといわれている。これは、木材そのものがCO2を吸収して成長する上に、建築物が寿命を迎えた後もバイオマス燃料などとして再利用できるためだ。国土交通省も公共建築物などを木造にすることを推奨している。
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