カーボンニュートラル社会の実現に向け、CO2を価値あるガス資源に変換する「CO2資源化技術」や、商品とサービスの原材料調達から廃棄/リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量(GHG)をCO2に換算して表示するカーボンフットプリントを実現する技術の開発が世界的に進められている。
CO2資源化技術には、再生可能エネルギーの電力を利用して、CO2を分解し化学品などに再生する「Power to Chemicals(P2C)」や、CO2とH2から天然ガスの主成分であるメタンを 合成する「メタネーション」技術 などがある。これらは、CO2を電気化学反応により分解したり、別のガスと反応させたりすることでCO2を資源化するが、高効率に資源化するには、反応中のガスの成分や濃度をリアルタイムにモニタリングしながら、ガスの反応条件を最適な状態に制御することが重要だ。さらに信頼性の高いカーボンフットプリントの算定に向けては、各温室効果ガスの濃度を測定し、正確に濃度を可視化しなければならない。
しかし、実環境でガスが反応する過程では、CO2や生成された資源ガス以外に、副生成物のガスや水蒸気が発生し、複数種類のガスが混合した状態になる。CO2を高効率に資源化、あるいは温室効果ガスの濃度を正確に把握するためには、混合ガスにおけるそれぞれの成分や濃度をリアルタイムに正確に測定する必要がある。
現在、ガス濃度の測定には、ガスクロマトグラフィーという分析装置が用いられているが、測定に時間がかかる ため、リアルタイムにモニタリングすることは困難だ。加えて、サイズが大きいため、P2Cやメタネーションを行う設備に導入するには複雑なシステムが必要だった。解決策として、ガス濃度の測定装置の高速化/小型化を実現する技術として、ガスセンサーの開発が世界的に進められている。
現状は、「酸化物半導体型」「接触燃焼型」「熱伝導型」という3種類の主なガスセンサーのうち、耐性面から熱伝導型が有効とされている。それは、CO2資源化技術では、生成ガスにCOなど被毒性の高いガスが含まれることが多く、酸化物半導体型や接触燃焼型は、こうした被毒性の高いガスにより搭載されたガス反応膜が変化してしまうという課題があるからだ。
一方、熱伝導型は、ガスの種類によって熱伝導性が異なることを利用してガスの濃度を測定し、ガス反応膜を使わないため被毒性の高いガスに対して耐性がある。しかし、3種類以上のガスが含まれていると、どのガスによって熱が奪われたのかを判定できず濃度を算出できないという問題があった。
そこで、東芝は、感度の異なる複数の熱伝導型ガスセンサーを採用し、各センサーの検出値をアルゴリズム処理して各ガス濃度の測定値として出力することで、どのガスによって熱が奪われたのかを判定する新型の熱伝導型ガスセンサーを開発した。
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