「熱機関」(図3左図)とは、エネルギーを熱として取り込み、1サイクルの動作の間に、取り込んだエネルギーの一部を仕事として放出する装置である。発電所では、燃料を燃やして生まれた内部エネルギーを使って水を蒸気に変える。この蒸気でタービンを回す。この回転という力学エネルギーが発電機を駆動して電気エネルギーに変換される。熱機関には、その周期的プロセスを通じて何らかの作業物質が介在する。
このプロセスは、
となる。すなわち、図3左図において次式が成り立つ。
熱機関の熱効率eは、熱機関が行った仕事Wと、高温の熱源から吸収したエネルギーの比で次のように定義される。
上式から分かるように、熱機関の効率が100%となるのは、Qlow=0のときで、このような熱機関を作ることは理論的に不可能である。これは「熱力学第二法則」の一つの表現である。
熱機関では、高温の熱源から低温の熱源に向かってエネルギーの移動が起こる。低温の熱源から高温の熱源に向かってエネルギーを移動できるか? これができないというのが熱力学第二法則の別の表現である。しかしながら、外部から機器にエネルギーを注入すればこれを実現できる。この任務を担うのが「ヒートポンプ」や「冷凍機」であり、エアコンはこの原理を利用している。ヒートポンプ(図3右図)は低温の熱源からQlowのエネルギーを吸収し、外部からWの仕事を受けてヒートポンプが作動し、Qhighの熱源を高温側に排出する。このとき、熱機関と同様に次式が成り立つ。
ヒートポンプの効率は「COP(Coefficient Of Performance)」という数値で表現される。COPは高温の熱源に熱として流入するエネルギーQhighと、そのエネルギーを移動させるのに要したエネルギーWの比として次式で定義される。
一方、エアコンの冷房時のような場合は、目的が異なるので冷凍機と呼ばれ、そのCOPは次式で定義される。
熱機関とヒートポンプの関係は、図4に示す揚水機能を有する発電システムからも理解できる。通常、水力発電は高い位置にある水を低いところに流すことにより水車を回して発電する。これが熱機関に相当する。一方、揚水発電では、夜間の余剰電源を用いてポンプにより水を低いところから高ところへ移動させる。これがヒートポンプに相当する。揚水発電では夜間に上部に上げた水を用いて昼間に発電を行う。
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