エアコンのモデリング(その1) 〜エアコンの作動原理を理解する〜1Dモデリングの勘所(20)(3/5 ページ)

» 2023年06月12日 09時00分 公開

気体の特殊性(振る舞い)

 熱力学理解する上で、気体の性質を知っておくことは重要である(今回のエアコンのモデリングでは、あまり使用しないが)。気体をある容器に入れると、気体の体積は容器の体積そのもので、その圧力は容器の大きさの状態で決まる。今、気体が体積Vの容器に入っていて、そのときの温度をT、圧力をPとし、これらの値がどのように関係しているかを考える。この関係式を「状態方程式」という。気体の圧力が低い(低密度の)場合、状態方程式は比較的簡便に表現でき、このような気体を「理想気体」という。室温、大気圧下の気体の多くは理想気体と考えてよい。

 また、ある体積の中に含まれる気体の量を、その気体の分子の個数で表現できるとよい。例えば、0.012kgの炭素12Cには、6.022×1023個の炭素原子が含まれる。この個数は物質量の単位「mol(モル)」を定め、アボガドロ数(Avogadro’s number)「NA」と呼ばれる。すなわち、

式6 式6

となる。物質のモル数nは、その質量mと次の関係で結ばれる。

式7 式7

 Mは物質のモル質量[kg/mol]という。例えば、酸素分子O2のモル質量は、0.032kg/molである。1分子の質量m0は、モル質量を分子の個数(アボガドロ数)で割って、

式8 式8

となる。なお、物質量モル[mol]は7つあるSI基本単位の一つである。

 上記の理想気体を円筒状の容器に入れ、上から可動するピストンで内部の体積を可変できるようにする。このとき、円筒には漏れがなく、気体の分子数は一定とすると、実験から以下のような事実が得られる。

  • 気体の体積を一定に保つと、圧力は体積に反比例する(ボイルの法則
  • 気体の圧力を一定に保つと、体積は温度に比例する(シャルルの法則
  • 気体の体積を一定に保つと、圧力は温度に比例する(ゲイリュサックの法則

 この3つの法則を状態方程式で表現すると、

式9 式9

となり、「理想気体の法則」と呼ばれる。このとき、Rは「気体定数」と呼ばれ、次の値となる。

式10 式10

 続いて、理想気体の「断熱過程」について考える。断熱過程とは、システムと環境との間で、熱によるエネルギー移動がない過程のことである。実際には完全な断熱環境の実現は難しいが、例えば、気体が急速に圧縮または膨張する場合には、熱の応答は付いていけず、実質的に断熱状態といえる。理想気体の断熱過程での圧力と体積の関係は、

式11 式11

となる。ここに、γは定積比熱を定圧比熱で割った値で、γ>1で、例えば酸素分子O2の場合には1.40である。

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