次に大村氏は、2022年5月に立ち上げたニデックの半導体ソリューションセンターで1年間どのような取り組みを進めてきたのかを取り上げた。
ニデックの半導体戦略の基軸にあるのは、小型コンピュータを内蔵するインテリジェントモーターソリューションの開発を目指す「Make」と、半導体サプライヤーとの強固なパートナー関係の構築を目指す「Buy」の最適配分を図ることである。大村氏は「ニデックが売上高10兆円を目指す以上、1兆円程度は半導体を作る(Make)か買う(Buy)かしないといけない。まずはその最適配分を検討する必要がある」と述べる。
Step1としては、現有半導体コンポーネント調達の安定確保に向けて、ニデックグループ内の4社でバラバラに行っていた半導体や電子部品の調達を車載事業本部による集中購買に切り替えることで、長期供給契約のスキームを成立させた。
次のStep2では、BuyからMakeへの移行を目指す形で、ニデックの商品にマッチした高付加価値半導体コンポーネントを開発/製造委託を含めて調達していくことを目指す。このStep2を経て、Makeによって開発したインテリジェントモーターソリューションを中核とする統合モーター制御ソリューションプロバイダーに移行するのがStep3となる。
Step2を進める上でニデックが重点を置いて取り組んできたのが、半導体メーカーに向けたRFI(Request for Information、情報提供依頼書)とRFQ(Request For Quotation、見積もり依頼書)である。例えば、E-Axleに最も必要な共通半導体は、MOSFETやIGBT、次世代パワー半導体のSiCといったパワーデバイスであり、グローバルにニデックのQCD(品質、コスト、供給)の視点でRFIを提示しサプライヤーを選定したという。「足元で最も不足しているMOSFETの場合、グローバルで19社にRFIを提示した上で選定した」(大村氏)という。
ただし、インテリジェントモーターソリューションに必要なX-in-1システム向けの高付加価値半導体コンポーネントを調達するためのRFQについては「ベストなサプライヤーはまだない」(同氏)というのが現状のステータスだ。
ベストなサプライヤーはまだないにもかかわらず、今回なぜルネサスとの間でX-in-1システムのPoC開発で協業することになったのか。大村氏は「X-in-1システムにはPros(長所)もあれば、その裏腹としてCons(短所)もある。RFIの提示などで関係性を深めたサプライヤーの中で、X-in-1システムの開発で一番前向きに問題解決しようと言ってくれたのがルネサスだった」と説明する。また、今回の協業に基づくX-in-1システムのPoC開発を通して、ハードウェアやシステムを統合するだけでなくソフトウェアなどの統合も図っていきたい考えだ。
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