トヨタグループのガバナンスについても質問が及んだ。「コーポレートガバナンスは、資本、オペレーション、ビジョンの共有など多面的なアプローチで浸透させていく必要がある。ただ、日野のクルマづくりに、トヨタのノウハウを生かしていくことが難しいことも分かってきた。より良い日野をつくろうとしてきたが、商用車のビジネスについてトヨタが日野を支えていくことにも限界があるという思いもあり、今回4社で未来志向の大きなフレームワークで取り組む関係性を作るに至った。トヨタにない強みをダイムラートラックや三菱ふそうに借りながら、よりよい日野の未来をつくっていきたい」とトヨタ自動車の佐藤氏は述べた。
ダイムラートラック CEOのマーティン・ダウム氏は、「(商用車メーカー共通の課題に取り組む狙いに加えて)われわれを結び付けたもう1つのことは、カーボンニュートラルと自動車の将来に向けた水素だ」とコメントした。トヨタ自動車も参加した4社の協力とすることで、水素活用の促進に力を入れる。
トヨタ自動車の佐藤氏は「ダイムラートラックとトヨタは燃料電池や水素エンジンの技術開発を早くから続けてきた。協力することで、多面的な技術の取り組みが、同時並行的に進められるようになる。さらに、日野と三菱ふそうの両ブランドの具体的な製品に落とし込む出口の議論もセットで行える。水素の普及に向けた取り組みが加速できる」と期待を示した。
ダイムラートラックのダウム氏は「トラックに関しては重要な知見や、事業規模がある。これをトヨタに提供できる。4社で技術やアイデアを持ち寄ることで、大きく飛躍できる。トヨタには日本の市場とサプライヤーの基盤がある。日野の伝統もある。将来の成功に必要なものは全て手にすることができるのではないか」と語る。
「世界最大の商用車メーカーになぜパートナーが必要なのか。これから取り組む課題や役割、仕事は非常に大きなものだ。これまで120年間続いてきたシステムを、今後20年で全く違ったシステムに、グローバルで変えていかなければならない。クルマだけのことではなくインフラも変える必要がある。違ったシステムを各社が作らなければならない……ということはやっていけない。1つのシステムが必要だから、協力が不可欠になる。そうしない限りは地球を助けるという使命を果たすことはできない」(ダイムラートラックのダウム氏)
「ダイムラートラックとトヨタは一緒に働いてきた。ダイムラートラックは大型トラック向けの燃料電池を開発してきたが、都市で走るバスに使うには大きすぎるため、トヨタの燃料電池の供給を受けた。テクノロジーの基本は共通でも、クルマの大きさに合わせてそれぞれのスペシャリストが必要だ。この協力では補完し合うことができる。今後はバスでの水素エンジンの搭載も考えられるだろう」(ダイムラートラックのダウム氏)
「何トンもの車両が坂道を上るには大きなエネルギーが必要だ。バッテリーだけで駆動力を生み出すには重くなってしまい、大出力の充電器も設置しなければならない。全ての商用車がEVになるのは難しい。EVの商用車がカバーできる場面もある。乗用車と同様に商用車にも複数の選択肢があるべきだが、1社で全て用意するのは難しい」(ダイムラートラックのダウム氏)
日野自動車 社長の小木曽聡氏は「似た市場をライバルとしてシェアしている三菱ふそうトラック・バスと一緒になることで、燃料電池、カーボンニュートラル燃料、EV(電気自動車)など新しい技術を協力してユーザーに提供していける。ダイムラートラックとトヨタ自動車を含めた4社で進めていくことで、カーボンニュートラルの実現にも貢献できる。4社の協力に参加させてもらうためにも、エンジン認証不正問題に1つ1つ丁寧に対応していく」とコメントした。
2022年3月に発覚した日野自動車のエンジン認証問題は、米国で集団訴訟が提起され、現在も継続中であるなどまだ解決していない。当局の調査や訴訟などの状況によっては経営統合の時期が変更される可能性がある。
また、経営統合の統合比率を算定するベースとなる日野自動車の株式価値については、エンジン認証問題にかかわる潜在債務に合理的な引き当てを行うことができた場合、引当金は企業価値から控除される。
企業価値を確定する基準日以降、エンジン認証問題に関して引当金に含まれない債務が顕在化し、新設する統合会社や日野自動車、三菱ふそうトラック・バスの株主が損害を被った場合、これらの株主が同意することを条件に三菱ふそうトラック・バスの株主に対して一定の金銭補償義務を負う契約とする。
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