京セラは、同社としては初となる3カ年の中期経営計画を発表。3年間で前3カ年の2倍近くとなる1兆2000億円の設備投資および研究開発投資を行い、その内約半分を半導体関連事業に割り当てる方針を示した。
京セラは2023年5月16日、同社としては初となる3カ年の中期経営計画を発表。3年間で前3カ年の2倍近くとなる1兆2000億円の設備投資および研究開発投資を行い、その内約半分を半導体関連事業に割り当てる方針を示した。
京セラでは2023年3月期(2022年度)に初めて売上高2兆円を突破。さらなる成長を目指すために2029年3月期(2028年度)に売上高3兆円、税引き前利益率20%の目標を掲げる。売上高1兆円を突破したのは2001年3月期(2000年度)で2兆円達成までは22年間かかったが、6年間でさらに1兆円の売上高拡大を目指す考えだ。今回発表した中期経営計画はこの2028年度目標のステップとなる前半3カ年(2023〜2025年度)をターゲットとし、2025年度に売上高2.5兆円、税引き前利益率14%の達成を目標とする。「今まで通りで到達できるような目標ではなく、従来にない新たな挑戦が必要となる。創業の精神としても高い目標を立ててそれを乗り越えるということがあるが、まさにそういう姿勢が求められる」と京セラ 代表取締役社長の谷本秀夫氏は語っている。
京セラでは従来、中期経営計画を外部に向けて発表していなかった。今回初めて中期経営計画を発表した理由について谷本氏は「従来は増産対応などについても1年あれば行えたために年単位での計画を示すだけでも問題なかったが、今は建築資材の納期長期化や建築人材の不足などもあり工場の新設や増設などでも3年程度の期間が必要になる。特に半導体市場が急速に拡大する中で、こうした動きに追随することを考えると、1年ごとにその場の状況に対応していくだけでは立ち行かなくなってきた。そこで市場の動きを先取りして京セラの成長に取り込んでいくために3カ年の計画を作り、それを積極的に示していくように決めた」と説明する。
中期経営計画の中で成長の最大のポイントと位置付けているのが、半導体関連事業を示すコアコンポーネント領域だ。2030年にかけて世界の半導体市場が2022年度比で倍増するとの予想も出ている中、京セラの取り扱うネットワークサーバ用有機パッケージや半導体用セラミックパッケージなどの半導体関連製品、半導体製造装置用のファインセラミック部品なども大きく伸長すると期待されているためだ。
谷本氏は京セラの半導体関連領域での強みについて「パッケージ製品では大型化や多層化に対応する製造技術や戦略顧客における高シェアを持つ点がある。一方、半導体製造装置用ファインセラミック部品では、精密加工や温度均一性など技術や品質、生産対応力などで先行している」と語っている。これらを生かし、先端半導体向けを中心に高い市場シェアを維持、拡大していく考えだ。
コアコンポーネント領域全体では2025年度に売上高7800億円、営業利益率18.0%を目指すが、内訳として、半導体パッケージ製品などを中心とした半導体関連部品事業では、情報通信向け有機基板とセラミックパッケージの増産対応、高付加価値製品への注力で、2025年度には3カ年で34%成長となる4900億円の売上高を目標とする。産業・車載用部品事業では、半導体製造装置用ファインセラミック部品の増産と車載ADAS(先進運転支援システム)やEV(電気自動車)関連需要の取り込みにより、2025年度の売上高は2022年度比28%増となる2550億円を目指す。
これらを実現するために、積極的に投資も行う。長期的需要増を見据え、ファインセラミック関連を扱う鹿児島の国分工場、滋賀県の八日市工場、半導体部品セラミック材料を扱うベトナム工場と鹿児島県の川内工場、半導体部品有機材料を扱う京都府の綾部工場、鹿児島県の川内工場で新棟を立ち上げる。
さらに、長崎県諫早市に工場用地を新たに取得し新工場を建設する。2026年度から生産を開始し2028年度には年間生産250億円規模まで拡大する計画だ。これら新工場の生産能力を生かし、既存工場のスクラップ&ビルドを進め効率的な生産体制を構築する。投資総額は前3カ年の2.3倍となる4000億円に達する見込みだ。谷本氏は「中長期的な需要拡大に対応するため、過去最大規模の積極的な設備投資を進めていく」と述べる。
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