矢野経済研究所は、CNFの世界市場に関する調査結果を発表し、2023年の世界生産量を前年比106.3%の85tと予測した。CNFは期待されていた分野での採用が進まず、耐衝撃性の向上や特異性能による価値訴求など、今後の需要確保が課題となる。
矢野経済研究所は2023年4月3日、セルロースナノファイバー(CNF)の世界市場に関する調査結果を発表した。
調査結果によれば、2023年のCNF世界生産量見込みは前年比106.3%の85t(トン)で、出荷金額は同103.7%の59億6000万円と見込んでいる。また、2025年の世界生産量を115t、出荷金額は75億2000万円と予測する。
なお、2023年CNF世界生産量見込みの85tは、国内CNFメーカーが有する生産設備の年間生産能力(1070t)の約8%で、今後数年間の需要確保が重要な課題となる。
CNFは、鉄と比べ、5倍の強度を持ち、5分の1の重量で、バイオ由来の材料として注目されていた。現在は添加剤や日用雑貨向け用途での採用実績はあるものの、自動車や家電、建材など期待されていた分野で、金属や既存繊維からの代替として採用された例は見られない。
CNFと樹脂との複合材料(CNF複合樹脂)の耐衝撃性は、シャルピー衝撃強度2k〜4kJ/m2程度が一般的だが、CNF複合樹脂を自動車内装部品に用いる場合は、同10k〜12kJ/m2程度の耐衝撃性が要求される。各CNFメーカーは、耐衝撃性の改良を進めているものの、2030年発売の車種への採用に間に合わせるには、遅くとも2025年には同10kJ/m2程度まで耐衝撃性を上げる必要がある。
ただ、エンジンルーム内のユニット部品など直接衝撃を受けないものや、搭乗者の安全を脅かすリスクの少ない部品については、現状の物性のままで使える可能性がある。また、人が乗らないドローンやスピードの出ない次世代モビリティなども、自動車と同等の耐衝撃性は要求されず、かつ軽量化ニーズが高いことから、このような部材での採用のポテンシャルを有している。
CNF複合樹脂の今後の展開としては、足りない物性を補い、幅広い用途での採用を目指す他、既存の素材にはないCNF独自の性能で付加価値を訴求するなどの選択肢がある。他に、セルロース繊維はナノサイズまでほぐすことで、優れた曲げ弾性率や分散安定性などを得られるが、こういった特異な性能へのニーズも考えられる。
同社は、ユーザーの期待を超えるCNFの性能を提案していくことが、2030年に向けたCNF需要の創出と拡大につながるとしている。
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