3つ目のトレンドは「製品開発におけるデジタルスレッドの推進」だ。トンプソン氏は、3Dアノテーションを用いて、全ての製品の定義を3Dモデルに含めることで“3D正”の設計を実現し、完全なデータ連携を可能とする「MBD(モデルベース定義)」の重要性とともに、MBDによる単一で正しい情報源を組織全体で活用する「デジタルスレッド」の価値について訴える。
トンプソン氏は「現在、多くの顧客が3Dモデルに情報を組み込んで、設計だけでなく、製造やサービスといった他の領域にまで3Dを活用しようとしている。3D CADで設計しているにもかかわらず、そこから2次元図面を起こして製造に渡すといったムダをなくし、開発プロセス全体をモデル中心に考えていく必要がある」と説明する。
続いて、トンプソン氏は「2023年には企業のアプリケーション支出の50%がSaaS型アプリケーションになる」と述べ、4つ目のトレンドとして「クラウドコンピューティング/SaaSの活用」を挙げる。これは3D CADなどの設計領域のアプリケーションも同様であり、クラウドコンピューティングの活用、SaaS型アプリケーションへの移行に対する関心が高まりつつあるという。
PTC自身も、2019年11月にSaaS型製品開発プラットフォームの「Onshape」を買収して以降、SaaS戦略を強化しており、Onshapeの技術をベースに構築したプラットフォーム「Atlas」を軸に、既存の主要ソフトウェアのSaaS移行を進め、ポートフォリオを強化している。現在、Onshape、PLMの「Arena」(2020年12月にArena Solutionsを買収)に加えて、ARソリューションの「Vuforia」やPLMソリューションの「Windchill」もSaaS対応を進め、「Vuforia+」「Windchill+」として提供を開始している。
また、「2023年5月には『Creo 10』の発表と併せて、『Creo+』の提供についてアナウンスする予定だ」(トンプソン氏)。
Creo+は、通常のCreo(オンプレミス版)が提供する機能をそのまま実装するとともに、クラウド上でのライセンス管理機能やOnshapeで定評のあったリアルタイムでのマルチユーザーコラボレーション(複数の設計者が連携しながらリアルタイムに設計作業を進められる)機能など、クラウド特有の機能が使えるようになっているという。
そして、最後のトレンドが「トレーニングへの投資」だ。これまで述べてきたCreoの機能などからも分かる通り、日々機能強化されていく3D CADを使いこなして、生産性や品質を上げて、より良いモノづくり、イノベーション創出につなげていくためには、設計者自身がツールの操作や機能を理解する必要がある。実際に、新機能などを活用してそのメリットを享受したいとの考えから、「トレーニングに対する関心や需要が増えつつある」(トンプソン氏)。
PTCが用意するトレーニングの機会の一例としては、Creoなどで提供している自主学習ツール「Learning Connector」のように、使用中の操作に連動したチュートリアルなどを提示するというアプローチの他、セルフラーニング形式のオンライントレーニングや実地での研修などがある。
また、最新の技術情報の収集やユーザー同士の交流が図れるイベントも重要な学びの機会であり、「2023年5月15〜18日(現地時間)に米国ボストンで開催される年次ユーザーイベント『LiveWorx 2023』では、今回の説明会で触れたいくつかの内容を踏まえたユーザー事例や、Creo+を始めとする新しいトピックスなど、最新の情報を発信する予定だ」(トンプソン氏)という。
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