Excelを使って周波数分析をやってみよう!CAEと計測技術を使った振動・騒音対策(5)(5/5 ページ)

» 2023年03月13日 07時00分 公開
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ノートPCをFFTアナライザにしよう

 ノートPCにはマイクが内蔵されているので、WAV形式で録音すれば前述した手順で騒音の周波数分析ができます。騒音計もFFTアナライザも買わなくてよいため、かなり安上がりです。

 WAV形式で録音するためのソフトウェアが必要です。しかし、PCにやたらとソフトウェアをインストールするのは嫌ですよね。筆者も嫌です。そこで、PCにインストールせずに実行ファイルをダブルクリックするだけで録音できるソフトを紹介します。Webブラウザで「ぽけっとれこーだー」と検索してみてください。すぐに見つかるはずです。ダウンロードしたファイル「prec.exe」をダブルクリックします(実際に試される場合は全て自己責任でお願いします)。そして、図20のように設定して録音を行ってください。

「ぽけっとれこーだー」の設定 図20 「ぽけっとれこーだー」の設定[クリックで拡大]

 サンプリング周波数が4万4100[Hz]ということは、1[s]の録音データをExcelに読み込むと4万4100行のデータになるということです。録音時間は2〜3秒程度にしましょう。そして、小まめに録音して小さなWAVデータとして保存することをオススメします。後述する理由から4万4100[Hz]以外の周波数は選択しないでください。

 騒音対策では、騒音レベルの大小を評価する必要があります。ここで紹介した方法では騒音の大きさが何デシベル(dB)かは分からないので、騒音計は別に買っておく必要があります(それほど高い買い物ではないと思います)。これで騒音の周波数分析の環境は整いました。

ステレオ録音とモノラル録音

 ここで少し別の話をします。WAVデータをExcelに取り込むマクロプログラムを作っていて気が付いたのですが、ステレオ録音のWAVデータをモノラル再生のアルゴリズムで再生すると1オクターブ低い音になってしまいます。ステレオとモノラルの相互互換性がないためですね。

 昔のアナログ技術には、ステレオとモノラルの相互互換性がありました。図21はステレオレコードの再生原理です。レコード針の左45[deg]斜め方向振動がL-channelの音になり、右45[deg]斜め方向振動がR-channelの音になります。振動方向が直交しているところがポイントで、L-channelの音はR-channelに混ざりません。「直交性」という性質ですね。

ステレオレコードの再生原理 図21 ステレオレコードの再生原理[クリックで拡大]

 では、アナログ録音されたレコード盤にステレオレコード針を置くとどうなるかというと、次式となりL-channelとR-channelには同じ音が再生されます。

式14 式14

 次に、ステレオ録音されたレコード盤にモノラルレコード針を置くとどうなるかというと、次式となりL-channelとR-channelの和がスピーカから聞こえます。

式15 式15

 ステレオFM放送にも互換性がありました。FM放送の周波数は高いので、耳に聞こえない高い周波数の信号を電波に乗せるができます。50〜1万5000[Hz]の周波数帯にはL-channel+R-channelの音が乗っています。そして、2万3000[Hz]以上の耳に聞こえない周波数帯にはL-channel−R-channelの音が乗っています。両者の和をとればL-channelの音となり、差をとればR-channelの音になります。モノラルラジオの回路は2万3000[Hz]以上の信号を再生できないので、ラジオからはL-channel+R-channelの音だけが聞こえます。

 昔のアナログ技術には創意工夫が詰まっていたと思います。電波がカラー放送になったとしても白黒テレビが映るのも素晴らしいですね。話がそれてしまいました。

前回の宿題の答え

 最後に、連載第4回の宿題の答え合わせをしましょう。この宿題はイジワル問題でした。離散フーリエ変換を逆変換したら元の信号になります。連載第4回の式14でテスト波形を作りましたが、これが離散フーリエ逆変換結果となります。つまり、答えは連載第4回の中で既に示されていたのでした。

 FFTアナライザを使いこなすにはもう少し説明が必要になります。あと1回お付き合いください。 (次回へ続く

⇒「連載バックナンバー」はこちら

Profile

高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表


1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。

構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ


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