ニトエルは大手製造業を主な対象とした調達DXサービス「nitoel」を提供開始すると発表した。さまざまな調達業務に必要な機能をオールインワンで提供する。
ニトエルは2023年1月31日から、大手製造業を主な対象とした調達DX(デジタルトランスフォーメーション)サービス「nitoel」を提供開始すると発表した。さまざまな調達業務に必要な機能をオールインワンで提供する。
ニトエルは製造業の調達DXを支援するスタートアップで、調達部門の業務効率化や原価低減を促すSaaS「nitoel」を展開する企業だ。購買マスターの情報を正確かつ整理した状態で取り出せる仕組みを作る。これまで調達部門の担当者が勘や経験に頼って行っていた業務をデジタル化することで、業務の脱属人化とともに、より戦略的な調達業務の遂行を可能にする。
nitoelは見積もり業務からサプライヤーの情報収集、品目の仕様管理、購買実績情報の管理と分析、原価低減のアイテム管理など、調達業務で求められるさまざまな業務支援の機能をオールインワンで提供する。例えば、見積もり機能ではサプライヤーから回答を得た見積もり明細を取得し、横並びで比較することができる。ペーパーレスだけでなく、同一フォーマットでデータを取得できるため転記レスにもつながる。見積もり明細のデータが一定程度蓄積されてきたら、それらのデータを基にしたコストテーブルを作成することもできる。
サプライヤーごとに生産能力や財務情報、担当者情報などをまとめることで、購入実績情報と併せてリレーション管理に役立てられる。さらに部品仕様や図面、代替品などの品目情報を活用した見積もり分析やサプライヤー分析も可能だ。見積もり情報や品目、サプライヤーなどの複数項目を活用しながら購買情報を分析できる。調達可能なサプライヤーの候補を把握することで、調達担当者が交渉負けしない環境を作ることを目指す。
これまでニトエルはβ版を複数社に提供していた。今回の正式版は2023年末までに30社程度の導入を目指すという。
ニトエル 代表取締役の辻絢太氏は、これまでERPや生産管理システム、サプライチェーンマネジメント(SCM)システムなどの導入に15年以上携わってきた。その中で、国内製造業における調達領域の担当者の扱いに、疑問を抱く場面が少なからずあったという。
辻氏は「調達部門は製造業の利益の源泉となり得る部門だ」と指摘する。調達業務の重要性を認識するとある国内大手自動車メーカーは、調達部門に大きな裁量を持たせるなどの改革を進めることで、結果的に大きな利益を出すことに成功した。設計や開発部門と共同で企業の利益を創出するための取り組みを進めている。また、辻氏は「世界全体で見れば調達部門の出身者が経営層に大きく関わることも少なくない」とも説明した。
だが現状、多くの国内製造業ではそうした状況になっていない。「調達部門は設計部門や開発部門が買うと決めたものを購入するという流れができてしまっている。その中でコストカットに成功しても社内では当たり前と見なされ、一方で欠品したら責任を問われる。これではモチベーションも上がりにくい。さらに最近ではGHG(温室効果ガス)プロトコルへの対応などで業務負荷も増えていると聞く。自社から投資もされないし、注目もされないという立ち位置にある」(辻氏)。
逆に言えば調達部門の社内での在り方を変えていくことで、製造業は新たな形での利益創出が可能になるともいえる。しかし、現状では設計部門や開発部門にコストカットとなる別の部材調達などを提案しようとしても、その論拠として必要なデータを収集する時間をなかなか生み出すことができない。そのため辻氏は、nitoelのようなデータプラットフォームを通じて業務支援を行いたいと思い創業したと語る。
ニトエルは2023年1月18日にシードラウンドで1億円の資金調達を行ったと発表した。調達資金は今後のnitoelのサービス開発に役立てる方針だ。
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