中国で一目置かれる日本人になるためにはリモート時代の中国モノづくり、品質不良をどう回避する?(10)(4/4 ページ)

» 2023年01月24日 09時00分 公開
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(4)群れる日本人

 日本人は群れやすい。その原因には“日本人は日本語しかできない”という言葉の問題がある。筆者が小学生であった1974年ごろ、父の転勤でギリシャに住んでいた。もちろん日本人は群れていた。当時、日本人が海外に住むということがまれであり、現地生活は心細かったため、日本人同士で群れるのも仕方がなかった。日本料理屋が首都アテネに1軒しかなかったのを記憶している。

 だが、現在は状況が異なる。中国では2006年くらいから在留邦人数がピークに達し、日本語のできる中国人も増え、住むことに関しての不安や不便さが少なくなってきている。既に、日本人同士で群れて行動する時代ではないのだ。

 プライベートな活動は別として、会社での業務に関しては、日本人同士で群れる状況はなくしたい。会議中、日本人同士でヒソヒソ話をする、社員旅行で日本人同士だけで群れて行動するなどは避けるべきだ

(5)足りない英語力

 日系企業で働く中国人で、日本語ができる人の多くは英語もできる。日本人の平均的な英語力のレベルが「5」だとしたら、そのような中国人の英語力は「8」くらいのレベルにある。それくらい日本人の英語力は低く、驚かれる。

 筆者が、英語のできる中国人に「どこで英語を勉強したの?」と聞くと、そろって「学校で」と答える。日本人も学校で勉強したはずだ。中国人にとって、中国に駐在に来るような日本人は、英語も堪能なエース級であってほしい。しかし、小学生レベルの英語力で話す日本人の姿を見ると、その評価は格段に低くなる。

 日系企業やローカル企業には日本語通訳がいるとはいえども、全ての職場や企業にいるわけではない。よって、日本語が使えないときは英語に頼るしかないのだ。その際、あまりにも低い英語力では仕事にならない。特に、グローバル環境で仕事をせざるを得ない現代は、英語は必須であることを知っておくべきだ。英語が苦手である理由の多くは、日本の学校の英語教育にあるのだが、それを言っても仕方がないので、企業もしくは本人が努力するしかない。

 「(2)中国人はお手伝い」の後半で紹介した組織の話に戻るが、中国に拠点を置く欧米系企業では、たとえ研究/開発/設計部門のある企業であっても、中国人のモチベーションは下がることはない。日系企業の場合、一般社員である中国人が日本の本社に電話をすることはほとんどない。それは、電話で仕事ができるほどの日本語力のある中国人が少ないからだ。これが英語でとなると、今度は日本の本社の社員が話せない……。

 よって、一般社員の中国人は、課長やリーダー格の人に情報を伝え、彼らが日本の本社と情報のやりとりをすることになる。つまり、課長やリーダー格の人材は、日本人でなければならないのだ。その結果、一般社員の中国人は昇進することができず、モチベーションがどんどん下がっていく。

中国の日系企業の一般社員は、日本の本社と連携して仕事をしにくい 図5 中国の日系企業の一般社員は、日本の本社と連携して仕事をしにくい[クリックで拡大]

 一方、欧米系企業では、一般社員は英語で欧米の本社とやりとりができる。よって、課長やリーダー格の人が欧米人である必要はない。筆者が、日系企業から欧米系企業に転職した中国人に話を聞いたところ、部長以外は全て中国人の企業が多かった。よって、一般社員の中国人でも昇進でき、結果、モチベーションは上がるのだ。ここにも、日本人の英語力の低さが影響している。

中国の欧米系企業の一般社員は、欧米の本社と連携して仕事をしやすい 図6 中国の欧米系企業の一般社員は、欧米の本社と連携して仕事をしやすい[クリックで拡大]


 今の時代は、グローバル環境での活動が当たり前である。「製造業の日本回帰」という言葉も出始めているが、それは“中国で製造することが当たり前となってしまった製品や部品の中で、付加価値の高い部品やモジュールをグローバル化の一環として日本で生産しましょう”ということであり、中国に限らず、東南アジア、インド、欧米への製造と販売、調達のグローバル化はどんどん進んでいく。そのような環境でこれから働く技術者は、ぜひとも今回紹介した(1)〜(5)の内容を忘れないでほしい。 (連載完)

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筆者プロフィール

小田淳

オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)

上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。

ロジカル・エンジニアリング Webサイトhttps://roji.global/

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