中国で一目置かれる日本人になるためにはリモート時代の中国モノづくり、品質不良をどう回避する?(10)(2/4 ページ)

» 2023年01月24日 09時00分 公開
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(2)中国人はお手伝い

 中国駐在中に、他部署の中国人でよく会話をする人がいた。彼の悩みは、日本人の上司がいろいろな案件に対して自分では判断せず、いちいち日本の本社に判断を仰ぐというものだった。

 確かに、日本人同士でも打ち合わせ時の一般的な会話として、「上と判断して〜」や「社に持ち帰って〜」などがよく用いられている。内容が専門的であったり、多くの関係者に関わるものであったりすれば「社に持ち帰って〜」も仕方がない。

 だが、「上と判断して〜」は、筆者は使わないようにしていた。中国に駐在する、もしくは出張に行く意図は、より現場の近くで事実を理解して判断するためであり、また少しでも早く判断するためでもある。中国にいて「上と判断して〜」とは、日本にいる上司に判断を仰ぐという意味になる。中国人から「何のために駐在しているのか?」「何のために出張に来ているのか?」と思われても仕方がない。

 しかし、これは日本人の国民性による仕事の仕方なので、改善するのが難しい部分でもある。連載第8回でお伝えした通り、日本人は「そもそも・すじ・べき論」が大好きで、これが物事の判断基準の大切な1つになっている。現実主義の中国人は「今、目の前」にある事実を捉え、物事を判断し、仕事を進めていくが、日本人はそこに“時間軸の判断”を加える。つまり、「その判断は過去に事例があるか/ないか」ということだ。

 過去の事例を持ち出し、その判断をより確かなものにしようとする行為であるため、一概に否定はできない。だが、駐在や出張の目的は、「今、目の前」の現実を見て、「早く」判断することである。そのことを駐在や出張する日本人は理解しておく必要がある。

「今、目の前」の現実を見て「早く」判断するために駐在/出張する 図2 「今、目の前」の現実を見て「早く」判断するために駐在/出張する[クリックで拡大] 出所:iStock/nikom1234

 この「上と判断して〜」は、日系企業の日本人上司の下で働く中国人にとってはストレスとなる。「今、目の前」の現実を自分たちが見て判断し、日本人上司に進言しているのに、なぜ遠い日本にいる日本人の上司に判断を仰ぐ必要があるのか? と思うのだ。自分たちで判断ができないのなら、ただの日本の本社の“お手伝い”である。結果、中国人のモチベーションが下がり、退社していくことになる。

 これは、日系企業の組織の作り方にも問題がある。日系企業の中で、部品や製品の製造工場などは、日本の本社から独立した組織になっていることが多く、このような問題は起こりにくい。しかし、研究/開発/設計部門を持つ日系企業は、日本の本社の人件費の削減のために、本社と連携を保ちながら仕事をする部や課の組織を中国に作ることがある。

 日本の本社には1課、2課、3課があり、4課を中国に持っていき、それを1つの「部」として昇格させる。日本人が中国に駐在すると昇進し、帰国すると降格することが多いのはこのためだ。4課(部)は、人件費の削減のためのお手伝いの部署となり、日本の本社の指示に従って業務をする。よって、日本の本社の判断を仰ぐ必要があり、中国人のモチベーションは下がることになる。現在は、中国人の給料は決して安くないので、このようなことにはなりにくいかもしれない。

研究/開発/設計部門がある日系企業にありがちな組織 図3 研究/開発/設計部門がある日系企業にありがちな組織[クリックで拡大]

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