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» 2022年11月14日 07時00分 公開

「そもそも・すじ・べき論」の日本人 vs. 「使えれば問題ない」の中国人リモート時代の中国モノづくり、品質不良をどう回避する?(8)(1/4 ページ)

中国ビジネスにおける筆者の実体験を交えながら、中国企業や中国人とやりとりする際に知っておきたいトラブル回避策を紹介する連載。第8回は「そもそも・すじ・べき論」で依頼をしようとする日本人と、「使えれば問題ない」と考える中国人の違いについて実際のエピソードを交えて解説する。

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ゼレンスキー大統領の国会演説と壁に開いた黒い穴

 今年(2022年)3月、ウクライナのゼレンスキー大統領から日本政府に対して、「国会で演説をさせてほしい」と申し出があった。報道によると、そのときの政府の最初のコメントは次のようなものだった。

前例がない、また国会に(Web)設備がないため検討をする。

 このコメントのうち、「設備がない」については理由として納得できる。設備を新設するか、Web会議のできる場所を探す必要があるだろう。しかし、「前例がない」は、ゼレンスキー大統領が国会で演説することに何が関係してくるのだろうか?

日本の国会で演説をするゼレンスキー大統領 図1 日本の国会で演説をするゼレンスキー大統領[クリックで拡大] 出所:首相官邸

 例えば、友人同士で「四ツ谷においしいラーメン店があるから、今度食べに行こう」となった場合、「前例ないね、検討しよう」とはならない。障害は何もないので、この発言自体に意味がない。しかし、この「前例がない」の言葉は、日本企業やその他の組織では、ごく一般的に使われている。

 筆者が中国に駐在し、オフィス内での職場移動の担当をしていたときの話である。職場の移動先に6つの会議室を新設した。そして、ペンキを塗ったばかりのとてもきれいな会議室の壁に、ホワイトボードを設置することになった。そのホワイトボードは横に長く、壁に直接固定するタイプのものだ。

 設置業者が作業をするに当たり、筆者と庶務兼通訳の女性が立ち会い、設置する場所を指定することになった。設置業者は、ホワイトボードを引っ掛けるフックをまず壁に取り付けるため、電動ドリルで壁に穴を開け始めた。しかし、穴はなかなか開かない。壁の裏側には鉄のフレームがあるようだ。仕方なく、穴を10cmほど横にずらして再度電動ドリルで穴を開けようとしたが、それでも穴は開かなかった。また、穴をずらしたがやはり開かない。どうやら、鉄のフレームは横に走っているらしい。よって、穴を上下方向にずらして開けることになった。

 しかし、穴を下方向にずらすと、失敗して開けてしまった穴がペンキ塗り立てのきれいな壁に黒い点として残り、見栄えが悪い。筆者はその見栄えの悪さが気になり、「上方向に穴をずらすよう、設置業者に言ってください」と庶務の女性に頼んだ。穴を上方向にずらせば、ホワイトボードで穴は隠れるからだ。

 すると庶務の女性は「上方向にずらすと、ホワイトボードの上の方に手が届かなくなってしまう人がいる。下にずらす方がよい」と言うのだ。筆者は背が高いので上方向でも問題はなかったが、確かに彼女の言うことは正しかった。

 よって、下方向に穴をずらすことに決めたが、筆者はどうしても見栄えの悪い穴を目立たないようにしたかったため、「パテで穴を埋められないか、(設置業者に)聞いてみて」と告げた。すると、庶務の女性から「小田さんね、ホワイトボードは書ければいいの。そんなこと言っていると、中国では仕事できないよ」と一括されてしまったのだ……。

ホワイトボードの上に開いた穴が黒い点として残り見栄えが悪い 図2 ホワイトボードの上に開いた穴が黒い点として残り見栄えが悪い[クリックで拡大]
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