中国人と中国語で仕事をすることは避けるべきだ。この件については、連載第3回を参照してほしい。しかし、雑談で中国語を使うことは問題ない。中国人は、日本から来た日本人を推し量っている。仕事のスキルを見ている場合もあるが、筆者がここでお伝えしたいのは、国民性と言語の違う中国人と一緒に仕事をすることに対して、この日本人が努力をしようとしているかを見定めているということだ。
そこで、まず大切なのは“会話をすること”である。もちろん、日本語が上手な中国人であれば日本語で会話をしてもよいし、そうでなければ英語でもよい。さらに、ステップアップを図りたいならば、中国語がベストだ。やはり、頑張って中国語だけで会話をしようと努力している日本人の姿勢は中国人から快く受け入れられ、また本人の中国語の上達も早くなる。
職場での会話の中には、日本人上司と中国人部下の関係であっても、その内容があまり重要でないものもある。それは「仕事は進んでる?」や「何か問題ある?」、もしくは何かトラブルがあったり、体調が悪かったりした後の「どう、大丈夫?」などである。中国語でこうした問い掛けをして、中国語でまともに返答されてしまうと、全然意味が分からずに戸惑ってしまうこともあるが、そのような場合は日本語通訳の力を借りればよい。
大切なことは「あなたのことを気に掛けています」という態度を示すことだ。これは、上司、部下の関係でなくても、ある案件を依頼する側の日本人と、依頼される側の中国人でも同じことである。気に掛けてもらえれば、そこから信頼関係が生まれ、人は一生懸命に仕事をする。これはビジネスだけでなく、日常生活の人間関係にもいえることだろう。
コロナ禍前は、中国に頻繁に出張に行っていた日本人も、今はめっきり行く機会が減っている。中国で不良品を出さないためには、製造現場に行くことが最も重要である。その意図は、現場を知ること、そして、現場の人との信頼関係を構築することだ。
不良品のほとんどは意図的なものではないが、中には意図的なものもあり、連載第6回で紹介した内容はその典型といえる。このような意図的とも思える不良品は、信頼関係がない場合に発生しやすい。
では、このコロナ禍で相手の表情も分かりにくいWeb会議だけで、どうやって信頼関係を築けばよいのか。その答の1つが「WeChat」の活用である。量産部品の作製中や量産開始のタイミング、また量産中に何か設計変更があったときなどに、小まめにWeChatメールを送るとよい。WeChatメールであれば、「生産は順調?」や「部品の傷、なくなってる?」といった問い合わせが気軽にでき、それを受けた中国人の担当者も、その日本人が担当する部品を気に掛けるようになる。定期的な会議以外にも、適度な頻度のコミュニケーションは大切だ。
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