中国人通訳に通じない「しょっちゅう」「ハードルが高い」「反り」元ソニーマンが教える「中国メカ設計事情」(1/3 ページ)

私が中国に駐在中、中国メーカーの日本語通訳に必ずといって良いほど質問することがありました。それは「『しょっちゅう』の意味を知っていますか?」というものです。

» 2018年05月29日 13時00分 公開
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「しょっちゅう」ってしょっちゅう言っていませんか?

 皆さんはじめまして。ロジの小田淳と申します。2016年までソニーでメカ設計エンジニアとして勤務していました。2009〜2013年には中国・上海に赴任し、現地部品の立ち上げに携わっていました。現在はコンサルタントとして、中国をはじめとするアジア各国でモノづくりを展開する方々の支援をしています。

 さて私が中国に駐在中、中国メーカーの日本語通訳に必ずといって良いほど質問することがありました。それは「『しょっちゅう』の意味を知っていますか?」というものです。

 皆さんは驚かれるかもしれませんが、私が駐在期間中に約50人にこの質問をしたところ、正解を言えた人はたったの3人でした。日本人は普段の会話で「しょっちゅう」をとても多く使っています。しかしこの簡単な言葉が、実はほとんどの中国人には通じていなかったのです。

 私の所属していた部署のある日本人の課長は、とてもゆっくりとした口調でお話をします。また声質も良く、会議では声がよく通ります。私は常日頃から、「とても分かりやすくお話をする人だな」と思っていました。ところがその課員の多くの中国人は、「課長の言うことが、よく分からない」と言うのです。

「ハードルが高い」って何?

 その理由を聞いてみたところ、「ハードルが高い」などの慣用句を非常に多く使っていたことが原因だと分かりました。この課長の癖なのでしょうね。恐らくこの課の会議は、課長の言ったことの3割くらいは中国人たちに理解されないまま進められていたのではないかと思います。

図1 図1 「ハードルが高い」の意味が理解できない中国人

「反り」がどういうことか伝わらない

 成形メーカーさんが、金型トライ品のサンプルを送ってきました。大きさが30cmくらいの成形品です。ところが、この部品が若干反っていて修正が必要だったので、それを成形メーカーの通訳の人に、電話で次のように伝えました。

 この部品の「反り」はもう少し修正できませんか?

通訳 「ソリ」って何ですか?

 曲がっているということです。

通訳 部品は曲がってないです。

 全体的に曲がっているのです。

通訳 「全体的に曲がっている」はどういう意味?

 なかなか「反り」の意味を理解してもらえませんでした。結局、お互いの会社の距離が車で30分程度のところなので、来社してもらって打ち合わせすることになりました。

 これら「しょっちゅう」や「ハードルが高い」「反り」を、皆さんは難しい日本語として捉えていますか? きっと捉えていないですよね。

日本語の得意な中国人でも理解できない言葉

 これら3つの言葉以外に私たち日本人にとっては簡単と思える日本語でも、中国人にとっては理解の難しい言葉がたくさんあります。それらの一部を紹介します。

  1. 難易度が高い言葉:「反り」「嵌合」「ゆがみ」
  2. 擬態語、擬音語:「テカテカ」「ツルツル」「ミシミシ」「カタカタ」
  3. 口語:「しょっちゅう」「マストでお願い」「どっちもどっち」
  4. 慣用句:「ハードルが高い」「百聞は一見にしかず」
  5. 曖昧語:「検討の余地がある」「近日中に」

 私たちはこれらの言葉を、普段の会話で非常に多く使っています。つまり私たち日本人が、中国人の日本語通訳に対して何も気にせず普通に会話をしてしまったら、通じない言葉が非常に多くあるということを、お分かりいただけると思います。

図2 図2 中国人に理解できない日本語の多い会議
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