一方、日本HPでは、2022年を“第二創業期の成長に向けた基礎固めの年”と捉えており、岡戸氏は「戦略事業の成長、社員が働きやすい環境づくり、サステナブルな社会への貢献の3つの柱でそれぞれ成果を出すことができ、将来のさらなる成長に向けた基礎固めにつなげられた」と振り返る。
このうち、戦略事業の成長を支えているのが、革新的な製品/サービスの存在である。その中で、特に製造業にかかわりの深いものとしては、HP Jet Fusionシリーズが挙げられ、岡戸氏は「現在、HP Jet Fusionシリーズの顧客はワールドワイドで1000社以上に達し、累計で1億7000万個以上のパーツが造形されている。この数字は、HPの3Dプリンタを最終製品へ適用する動きが加速している証拠だともいえる」と好調さをアピールする。
また同様に、日本の製造業でもHP Jet Fusionシリーズの導入が加速しているとし、「日産自動車やトヨタ自動車などが採用しており、HP Jet Fusionシリーズにしかできない新しい事例も続々と生まれている」(岡戸氏)と説明する。
さらに、今回の事業説明会に併せ、ホワイトアプリケーション(白色での造形)を可能にする「HP Jet Fusion 5420W」が、HP Jet Fusionシリーズの新たなラインアップとして加わったことを発表した(なお、海外では2022年11月に発表されている)。
従来のHP Jet Fusionシリーズの造形物は灰色(グレー)がベースで、後処理でカラーを施しても暗いトーンになりがちだったが、HP Jet Fusion 5420Wは高品質な白色パーツを安定的に製造する技術を備えており、より明るく、より鮮やかな色彩表現が可能になるという。「一例として、HP Jet Fusion 5420Wで造形した義肢装具などに対して、肌色に近いカラーリングを後処理で施すといったことが可能になる。鮮やかな色彩表現が可能になったことで、さらに活用の幅が広がるのではないかと期待している」(同社 3Dプリンティング事業部 コマーシャルアカウントマネージャー 宮内大策氏)。
HPは、造形後の後処理を推進するため、後処理加工機メーカーのAdditive Manufacturing Technologies(AMT)との戦略的提携を発表し、3Dプリント製造ワークフロー全体を通じて、シームレスで完全に自動化された後処理サポートを提供するとしている。具体的には、開梱、洗浄、表面仕上げ、着色、品質管理といった後処理機能について両社がサポートする。さらに、複数のプロバイダーが提供する各種ソリューションとの連携も可能だとし、例えば、HP Jet Fusion 5420Wで造形した白色パーツの表面仕上げや着色などが行えるDyeMansionの高度な後処理オプションを活用できる。
なお、HP Jet Fusion 5420Wの国内販売は、2023年5月を予定しているという。
事業説明会の最後、岡戸氏は「現在、経営者にとって会社運営が非常に難しい時期に差し掛かっているが、一方でこれはチャンスでもあり、経営者の力量が問われる時であるともいえる。前社長の岡さん(岡隆史氏)からバトンをしっかりと受け取り、経営基盤の一層の強化を図ってきた。グローバル企業だからこその充実した製品、サービス、ポートフォリオ、そして、『東京生産』に代表される日本に根差したきめこまかな持続可能なオペレーション、多様性に富んだ卓越した人材の育成など、さらなる事業成長に向けた準備はできている。兎年にふさわしい飛躍の1年になることだろう。2023年も日本HPに期待してほしい」と締めくくった。
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