第2段RCSは、片側当たり、1個の燃料タンクと、4基のスラスターで構成される。燃料のヒドラジンは、窒素ガスで加圧。地上では安全のため、元栓となる「パイロ弁」を閉じておくが、打ち上げ後、誘導制御計算機(OBC)から信号を送ってこれを開くと、下流のスラスターまで燃料が押し出されるという仕組みだ。
しかし、+Y側では下流の圧力が上昇しておらず、つまり燃料が出て来なかったわけで、推力が発生しなかった。JAXAはこの原因を究明するため、実際のフライトデータに基づくFTA(Fault Tree Analysis:故障の木解析)を実施。その結果、要因を以下の3つに絞り込んだ。
上記のうち(1)は電気系統に問題が起き、パイロ弁に点火信号が伝わらなかった可能性だ。(2)は信号は届いたものの、パイロ弁に不具合があり、開く動作が正常に行われなかった可能性。そして(3)はパイロ弁は動作したものの、燃料タンクからスラスターまでの配管のどこかが詰まり、燃料が流れなかった可能性である。
飛行中にモニターされているデータには限りがあり、フライトデータのみではこれ以上の特定は難しい。そこで、JAXAはさらに、製造・検査データも調査。工場での製造時や、射場での組み立て時に、何か異常はなかったのか。異常はなかったとしても、検査データにいつもと違うトレンドは残っていないか。詳しく調べた。
記事執筆の時点(2022年11月5日)で、まだ確認作業は全て終わっていないものの、上記(1)については、点検した項目全てが良好だったため、可能性を排除している。要因として、(2)と(3)が残った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.