VRは技能伝承を目的とした利用ケースも増えているという。プラントなどにある大きな機械設備を仮想空間上に再現して、保守作業をシミュレーションするのだ。機械の分解や組み立ての順番、点検項目などを教育でき、「実機が要らず、場所も選ばずに繰り返しトレーニングできるという点を評価してお声がけいただくことが多い」(説明員)。
作業支援としてARの活用も進んでいる。ブースでは、富士通の海外工場におけるネットワーク機器の組み立て工程での用例が紹介されていた。作業者が装着したARグラスが手元の動きを読み取り、次に部品をどこにはめ込めばいいかを表示する。作業者はマニュアルを見ることなく、迷わず組み立てができる。
作業の進捗状況も表示される他、首を振ったりしても決められた基準点を認識して、表示の位置は自動で補正される。導入後、組み立てにかかる時間は大幅に削減できたという。「一品一葉の製品の組み立てより、同じ製品を大量に組み立てる工程で大きな効果を生む」(説明員)。
筆者もデモンストレーションでVRの世界を体験したが、“見る”という部分に関してはかなり再現できるようになってきていると感じた。現在は、実際の重さや触感の再現ニーズがあるという。
5Gと高精度位置測位技術を組み合わせて、屋内でもmm単位で位置を捕捉する技術も紹介された。
高精細のエッジAI(人工知能)カメラが人、モノの位置を測定し、位置情報をAGF(無人フォークリフト)などに伝えることで、AGFのガイドレス制御や人とロボットの連動による協調作業が可能になる。富士通はローカル5G実証環境「FUJITSUコラボレーションラボ」(神奈川県川崎市)を設立して、実証実験を進めている。
また、富士通では高精度位置測位技術を工場の作業進捗の把握にも利用しているという。mm単位で捕捉できることを活用し、工場内の人や製品の動きなどを正確に捉えて、タクトタイムをチェックするのだ。これにより、作業者が毎回ボタンを押して各作業の終了を知らせる必要もなくなり、作業効率が向上する。
その他、稼働率や不良率、電力消費量など工場全体のさまざまなデータを見える化し、課題解決や生産性向上に役立てる「COLMINA 工場最適化ダッシュボード」も紹介した。
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