リチウムイオン電池部材の市場は2025年に2倍に、一部で実需以上の成長か電動化

矢野経済研究所は2022年10月20日、リチウムイオン電池の部材の市場調査結果を発表した。正極材、負極材、電解液、セパレーターを対象にしており、2025年には2021年比で2.1倍の899億7525万ドルに拡大すると見込む。

» 2022年10月21日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 矢野経済研究所は2022年10月20日、リチウムイオン電池の部材の市場調査結果を発表した。正極材、負極材、電解液、セパレーターを対象にしており、2025年には2021年比で2.1倍の899億7525万ドルに拡大すると見込む。

リチウムイオン電池部材の世界市場調査[クリックで拡大] 出所:矢野経済研究所

 2021年におけるリチウムイオン電池の主要4部材の市場規模(出荷金額ベース)は、推計で前年比81.4%増の424億7884万ドルだった。

 コロナ禍でも車載用リチウムイオン電池セルの市場成長が続いている。中国と欧州での電動車市場の伸びが著しいためだ。中国では、プラグインハイブリッド車(PHEV)や電気自動車(EV)が該当する新エネルギー車の販売台数が300万台を超え、新車に占める新エネ車の構成比は10%超となっている。欧州では自動車メーカー各社のラインアップ拡充や補助金政策によって電動車市場の成長が促されている。

 2022年以降のリチウムイオン電池の市場は、民生用では鈍化が予測されるものの、引き続き車載用は成長が見込まれるという。リチウムイオン電池の主要4部材の市場規模は、前年比40.8%増の598億917万ドルと予測する。リチウムやニッケル、コバルトなどの資源価格急騰で電解液や電解質、正極材の価格が大幅に上昇している。一部のリチウムイオン電池部材で値下がりの傾向はあるが、全体では横ばいもしくは上昇すると見込まれる。

成長著しいが、実需以上の伸びか

 リチウムイオン電池部材の国別出荷量をみると、2021年は正極材、負極材、電解液の3つで中国のシェアが8割を超えている。セパレーターも7割を占める。それぞれの部材が前年と比べて2倍前後の伸びを示している。正極材ではリン酸鉄リチウム(LFP)の採用急拡大が貢献した。セパレーターはハイエンドからローエンドまで全てのセルで採用が拡大したことが出荷増につながった。

 なお、正極材のLFPの急拡大はリチウムイオン電池セルの実需以上の伸びである可能性があるという。負極材もセルの需要に対して出荷量の乖離が大きい状況にあるとしている。

 4部材で2番目のシェアを持つ日本は、いずれの部材でもシェアを落とす傾向にある。韓国も同様に構成比が下がる傾向にある。中国部材メーカーの伸びに及ばないためだ。韓国では、国内のリチウムイオン電池セルメーカーの生産能力増強に合わせて、部材メーカーも積極的な設備投資を実施している。

部材の国別シェア[クリックで拡大] 出所:矢野経済研究所

地産地消がコストアップにつながる可能性

 今後、電動車は中国だけでなく欧州や北米でも拡大し、各国の政策を踏まえてリチウムイオン電池部材の現地生産も具体化し始めている。

 一方で、資源価格急騰により、これまでに期待されていたような車載用リチウムイオン電池のコストダウントレンドは見込みにくくなっている。2023年以降には部材価格上昇が落ち着きを見せる可能性があるが、地産地消の推進はコストアップの要因につながりかねず、電動車の市場成長のネックになることも想定される。

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