自動化が進む工場内作業において、いまだに人手で行われることが多く“取り残された領域”となっているのが搬送作業である。この工程間搬送の自動化を推進しているのが、高性能のプリント配線板の設計/製造を行っているOKIサーキットテクノロジー(以下、OTC)の鶴岡事業所である。同事業所での取り組みを紹介する。
自動化が進む工場内作業において、いまだに人手で行われることが多く“取り残された領域”となっているのが搬送作業である。搬送作業は必ずしも人手で行う必要はないが、従来技術では固定化された搬送以外は難しかったため、結果として人手で行われることが多かった。しかし、AGV(無人搬送車)/AMR(自律搬送ロボット)技術が発展したことで、徐々に工場内搬送の自動化領域が広がってきている。
これらを背景に、多品種少量生産を行う工場で、工程間搬送の自動化を推進しているのが、高性能のプリント配線板の設計/製造を行っているOKIサーキットテクノロジー(以下、OTC)の鶴岡事業所である。同工場では、複数の建屋に分かれた3階建てで、工程間搬送を自動化するには、これらの複雑なルートやエレベーターによる上下移動が必要となる。これらの実現までの取り組みを紹介する。
OTCは、1970年に田中貴金属工業とパイロットインキが共同出資会社として設立したパイロットケミカルが前身となる工場だ。2012年に田中貴金属工業からOKIに事業譲渡され、OKIの100%子会社となり、2021年4月にはOKIグループ内でプリント配線板を扱うOKIプリンテッドサーキットと統合した。
OTCで製造するプリント配線板は、高信頼性、高精度、高機能、特殊用途などの高付加価値製品が中心である。通信機器や制御機器、放送機器、半導体テスター、計測機器、インフラ関連機器、航空宇宙関連機器など向けのプリント配線板が主力だ。
プリント配線板市場全体は厳しい環境にあるが、高付加価値領域に限定すると安定した需要があり、OTCでは用途を拡大することで成長を続けている。しかし、一方で国内における労働人口減少の影響による人手不足は深刻さを増しており、事業成長に必要な人員を確保するのが難しい状況となってきている。山形県鶴岡市にある鶴岡事業所では、周辺に多くの工場が存在することもあり、人手不足の影響をより色濃く受けている。
そこで、既存の人員で生産能力を高めるために、自動化領域の拡大に積極的に取り組んできた。2019年に専門チームを設置し、省力化により生産工数を20%削減することを目指してさまざまな取り組みを推進。工場内で自動化が行える可能性がある領域をピックアップし、小さな自動化を積み上げて効率化を進めてきている。
こうした取り組みの1つとして力を入れるのが、搬送工程の自動化である。鶴岡事業所で取り扱う高付加価値のプリント配線板は、大型で多層化が進んだ基板が多く、同じ工程を何度も繰り返すものが多い。一方で、これらの工程はレイアウト面で異なる建屋に工程が分散する形となっており、搬送に必要な労力が大きくなっていた。しかし、建屋が古いために、大きな搬送設備を使用することはできず、従来は人手による搬送に頼っていた。
ただ、AMRが登場してきたことでこれらの搬送を自動化できる可能性が出てきた。OTC 鶴岡事業所 技術統括部 設備技術部 部長の佐藤和昭氏は「AMRにより搬送工程の自動化への可能性が見えてきた。まずは工程間の搬送の自動化を推進する。将来的には装置間の搬送や各作業場への材料供給の運搬作業も自動化していくことを想定している」と語っている。
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