運用面でも工夫をした。エレベーターそのものは人もAMRもそれぞれが利用するが、昇降動作を「人優先での利用」と「AMR優先での利用」とそれぞれの利用ターンを完全に分けて運用。AMR優先で利用中はエレベーターのボタン操作を人が行うことはできず、途中で降りることなどもできないようにしている。「混在環境でのシステムの混乱を避けるためにシンプルな形とした」(阿部氏)。AMR優先で使用中は積層信号灯を点灯させ、それを各階層でエレベーターを待つ人にも周知する。
さらに、AMRが利用時にエレベーターと各階の床の間の隙間に脱輪する可能性があったため、隙間短縮工事なども行ったという。また、新たなルート設定に合わせて、AMR通信用のWi-Fiアクセスポイントも増強した。
フロアを移動することで、AMRとしては1階のマップ、2階のマップ、3階のマップを切り替えて位置認識を行う必要があるが、人が入り込むことなくエレベーターとの連携を行えるため、エレベーターの各階層への到着をトリガーとしてマップを切り替える仕組みとした。「多少位置認識に手間取ることはあるが、マップの切り替えについてはおおむね問題なく機能している」(阿部氏)。
フロア間を移動することで予想外の停止などについて、目のとどきにくくなる部分もあるが、中央監視室での確認の他、工場内でも搬送稼働状況をモニタリング可能にし、トラブル時にすぐに気づいて対応できるようにしているという。
これらの取り組みを重ね、2022年4〜5月に試運転を開始。その後、2022年6月から本格運用を開始した。1〜3階のフロア間移動も含め2台のAMRで11のルートで搬送を行っているが「当初は調整が必要な部分もあったが今はおおむね順調に稼働している」(阿部氏)。
効果も確実に生まれている。まだ最終的な検証はできていないとするが、1日当たりの搬送距離で47km、効果時間としては1日当たり11.75時間の作業時間削減効果を見込むという。現場からも好評で「現在はステーションのタブレット端末で呼び出して稼働させているが定期便を追加してほしいという声もある。新たに3つのルートを検討している。現場からの声と実現可能性も含めて検討を進めていく」(佐藤氏)。直近の8月からはAMRをもう1台追加し、3台体制で運用を進めているという。
今後はこれらの実績を鶴岡事業所以外にも拡大していく計画だ。OTC 代表取締役社長の森丘正彦氏は「新潟県上越市に上越事業所もあるが、現在増床を進めている。この増床部分も含めて自動搬送化を実現できるように鶴岡事業所でのノウハウを展開する予定だ」と述べている。
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