筑波大学らは、マウスを用いた研究で、他者から挑発を受けると通常よりも攻撃行動が激しくなるメカニズムの一端を解明した。外側手綱核から背側縫線核への神経投射が、社会的挑発を受けると活性化する。
筑波大学は2022年7月21日、マウスを用いた研究で、他者から挑発を受けると通常よりも攻撃行動が激しくなるメカニズムの一端を解明したと発表した。
脳領域の外側手綱核(LHb)から背側縫線核(DRN)への神経投射(LHb-DRN投射ニューロン)が、社会的挑発を受けると活性化する。さらに、その情報を受け取った非セロトニンニューロンが活性化することで、攻撃行動が過剰になることが示された。慶應義塾大学、東北大学との共同研究による成果だ。
他者から悪意を向けられると、いら立ち、攻撃的な気持ちになる。オスのマウスも、事前に社会的挑発をすると別のオスが縄張りに入ってきたときに攻撃行動が増加することが分かっている。
今回の研究では、不快情動やストレスに関わる外側手綱核から背側縫線核への神経信号の受容について着目した。その結果、挑発攻撃の際はLHb-DRN投射ニューロンが活性化しているのに対し、通常の攻撃では活性化していないことが明らかとなった。
また、人為的にLHb-DRN投射ニューロンの神経活動を活性化すると、オスの攻撃行動は増加した。逆に、活性を抑制すると挑発を受けても攻撃行動は通常攻撃と同程度であった。
背側縫線核のどのニューロンが挑発攻撃に関与しているかを調べたところ、腹側被蓋野に投射するニューロンが関わっていることが明らかとなった。背側縫線核はセロトニンニューロンが存在することで知られているが、この結果から挑発攻撃は非セロトニンニューロンが関与していることが示された。
研究グループはこれまでに、社会的挑発により攻撃行動が激化するメカニズムとして、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の入力が背側縫線核で増加することを明らかにしていた。今回の結果は、人間の暴力性の問題理解にもつながることが期待される。
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