東北大学、東京大学、公立はこだて未来大学は、サルを用いた研究で、論理的な思考過程に関係する神経活動を発見し、その理論モデルを構築することで脳内の論理的思考に関わる神経メカニズムを解明した。
東北大学は2022年7月26日、サルを用いた研究で、論理的な思考過程に関係する神経活動を発見し、その理論モデルを構築することで脳内の論理的思考に関わる神経メカニズムを解明したと発表した。東京大学、公立はこだて未来大学との共同研究による成果だ。
これまでの研究で、数秒後にジュースまたは食塩水が与えられる予告刺激として複数の抽象図形をサルに提示すると、サルは同じ結果に結び付く図形をカテゴリー化して記憶し、そのカテゴリー情報を使って考え、判断することで予測的に行動することが明らかとなっている。
今回の研究では、サルがこの課題に取り組んでいる際の神経活動を解析した。その結果、前頭連合野に、「課題のルール情報」「カテゴリー情報」「予測結果」「それら複数の情報」を持つ4つの神経集団がそれぞれ存在することが明らかとなった。
各神経集団の情報表現の経時的変化を3次元情報空間で表すと、ルール情報を持つ神経集団とカテゴリー情報を持つ神経集団の情報表現は比較的安定していた。一方、複数の情報を保持する神経集団の情報表現は、時間経過とともにルールの情報を持つ神経集団の近くから予測結果の情報を持つ神経集団に近づき、ルールの情報に偏った状態からカテゴリーの情報を取り込んで予測結果の情報表現へ変化する様子が可視化された。
この解析結果から、論理的思考は複数の情報を持つ神経集団が主に行っていると考え、4つの神経集団の関係性について理論的なニューラルネットワークモデルをコンピュータ上で構築した。
構築した理論モデルをシミューレーションすると、実際の神経活動から得られた動作とよく似た動作を確認できた。
これらの結果から、前頭連合野において、ルールやカテゴリーなど個別の情報を持つ神経集団から、論理的な予測計算をする別の神経集団に情報が伝わり、最終的な予測結果が導かれるという思考過程が細胞レベルで明らかとなった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.