東京大学は、皮膚内の体液から新型コロナウイルスに対する抗体を検出できることを明らかにした。生分解性多孔質マイクロニードルとイムノクロマトアッセイを組み合わせ、皮膚に貼るだけで抗体を検出できるパッチ型抗体検出デバイスを開発した。
東京大学は2022年7月1日、皮膚内の体液から新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抗体を検出できることを明らかにした。また、生分解性多孔質マイクロニードルとイムノクロマトアッセイを組み合わせ、皮膚に貼るだけで抗体検出ができるパッチ型抗体検出デバイス(Porous MicroNeedle and ImmunoAssay:PMNIA)を開発した。
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微小サイズの針に多数の穴がある多孔質マイクロニードルは、毛細管現象により微量の細胞間質液を皮下から採取できる。今回の研究では、生分解性物質であるポリ乳酸(PLA)の微小球状粒子を利用し、多孔質マイクロニードルを形成した。
この多孔質マイクロニードルを用いた動物実験では、皮膚から細胞間質液を採取できることを確認した。マイクロニードル除去後は、皮膚が速やかに元の状態に回復することも確認できた。
また、この生分解性多孔質マイクロニードルと金コロイドナノ粒子を用いたイムノクロマトバイオセンサーで構成する、パッチ型抗体検出デバイスを製作。マイクロニードルを皮膚に刺すと、毛細管現象により細胞間質液が採取され、センサーに運ばれる。採取した細胞間質液は、サンプルパッドの上部にあるコンジュゲートパッドに垂直方向に移動する。
細胞間質液中に、抗SARS-CoV-2免疫グロブリンM(IgM)や免疫グロブリンG(IgG)抗体がある場合、各抗体はコンジュゲートパッド上のSARS-CoV-2スパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)標識金コロイドナノ粒子と結合して、抗原−抗体結合を形成する。IgM結合体とIgG結合体が、それぞれ抗ヒトIgM抗体と抗ヒトIgG抗体によって捕捉されると、色のついた線で表示されるため、抗体の有無を目視で確認できる。
実験では、抗SARS-CoV-2 IgMとIgG抗体が3分以内に試験管内で同時検出された。さらに、IgMとIgG抗体の検出限界はそれぞれ3ng/mL、7ng/mLで、市販の検査キットと同等以上の感度を示した。
開発したデバイスは、小型かつ低侵襲で簡単に使用できるため、将来的にさまざまな感染症の迅速スクリーニングへの応用が期待される。今後は、ヒトの臨床応用を検証し、同デバイスの実用化を進めるとしている。
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