樋口氏が2017年4月にCNS社のトップに就任してからの5年間、ブルーヨンダーの買収を中核とした成長事業の構築と、継続的に収益を稼ぐコア事業の選択と集中を進めてきた。同氏がCNS社の事業構造改革を進める上でのコンセプトとして説明してきたのが「3階建て」による施策である。
3階建てのうち、2階は「箱売りからソリューション売りへの転換」、3階は「持続可能な収益性に向けた選択と集中」となっており、それぞれ現在の成長事業、コア事業の体制を生み出すための施策と直結している。これら2階と3階を支える基礎として、樋口氏が最も重視してきたのが、1階に当たる「文化面の改革」である。2022年6月30日に、パナソニックHD 執行役員 グループCIOの玉置肇氏が同社グループで推進しているDX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクト「PX(パナソニックトランスフォーメーション)」について説明したが、そのために必要な情報システム部門における文化面の改革の先行事例として挙げたのが、樋口氏の取り組みだった。
樋口氏は、CNS社発足から5年間でのカルチャー変革の意義について「カルチャーが正しくなければ全てが始まらない」と語る。同社では、付加価値を生み出すという観点での広義の生産性を重視しており、そのためには社員が生き生きと働ける環境が必要になるという。
しかし、パナソニックのように100年以上の歴史を持つ企業のカルチャーはそう簡単に変えることはできない。「これはトップのトーンセッティングで全て決まる。いかに本気でやるか、社長室から現場に出て腕まくりしてやれるのか。そして、自身がオープンでフェアでアプローチャブルなリーダーでなければならない。制度や形だけでは変わらないので、さまざまな仕事や業務が足し算で積まれる現場に対して、トップが自ら引き算で切っていくという判断を適宜行っていかなければならない。そのためには、現場のことをよく分かっている必要がある」(樋口氏)。
これらの組織変革は反動としての復元力も働くため弛まず継続する必要がある。樋口氏は「どうしても思いに共鳴してもらえない場合は人事で示すことも必要だ。こういった形でリーダーシップを発揮し続けていきたい」と述べる。
3階建ての事業構造改革の進捗度合いについては、1階の文化面の改革は「いくらやっても変わらないのが変わってきた」(樋口氏)という意味を込めて7~8割、2階の箱売りからソリューション売りへの転換は「少し無理があることもやった」(同氏)こともあり4割、3階の持続可能な収益性に向けた選択と集中は「かなり進んだ」(同氏)とした。その上で「全体で8割くらい」(同氏)としている。
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