東京大学は、オスマウス同士の攻撃行動の制御に重要なフェロモン受容体として、Vmn2r53を同定した。Vmn2r53を介した情報が視床下部の特定の神経回路に伝達され、攻撃中枢が過去の攻撃経験に依存して活性化することが明らかになった。
東京大学は2022年6月3日、オスマウス同士の攻撃行動の制御に重要なフェロモン受容体を同定したと発表した。このフェロモンの情報が視床下部の特定の神経回路に伝達され、攻撃中枢が過去の攻撃経験に依存して活性化することが明らかになった。
研究ではまず、さまざまなフェロモンが含まれる尿を他のオスマウスに嗅がせ、応答したフェロモン受容体を解析した。その結果、オスマウスの尿により活性化されるフェロモン受容体として、Vmn2r53が同定された。
このVmn2r53を欠損させたマウスを作製したところ、他のオスマウスに対する攻撃性が低下した。次に、フェロモン受容体の中でVmn2r53のみを活性化させる画分(53AF)を用意してオスマウスに嗅がせると、攻撃行動を経験したことのある個体は攻撃行動が促進した。これらの結果から、Vmn2r53がオス間の攻撃行動の制御に重要となることが分かった。
また、神経活動の記録や操作、可視化により、オスの攻撃行動を促進する神経メカニズムを調査した。Vmn2r53を介した情報は視床下部の腹側乳頭体前核(PMv)を活性化し、さらに下流の腹内側核腹外側領域(VMHvl)を攻撃経験に依存して活性化することで、オスマウスの攻撃行動が促進される。なお、VMHvlは、従来の研究で攻撃中枢と同定されている。
今回の成果から、Vmn2r53を介した感覚入力のPMvやVMHvlの神経活動を詳細に解析することで、これまでは抽象的だった「性の認識」と「闘争心」が生じる神経メカニズムの理解が進むことが期待される。
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